• 【魔法使いの嫁】ヤマザキコレが担当編集と明かす原作コミック誕生秘話
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2024.03.29

【魔法使いの嫁】ヤマザキコレが担当編集と明かす原作コミック誕生秘話

『魔法使いの嫁』20巻 カバー  (C)Kore Yamazaki / BUSHIROAD WORKS

昨年末、怒涛の〝学院編〟がアニメ化され人気を博した『魔法使いの嫁』。その原作が、マッグガーデンからブシロードワークスに移籍し、初となる第20巻が4月12日に発売される。
原作、アニメともに多くのファンを魅了している同作は、どのような経緯で誕生したのか。アニメ「魔法使いの嫁」公式コンプリートブック(MdN刊)に掲載された原作者・ヤマザキコレ先生×新福恭平さん(担当編集者)の対談を一部抜粋。連載初期のドキドキな制作舞台裏とは!?


■短期間で生みだした物語が10年続く作品へ

──『魔法使いの嫁』という作品が生まれた経緯を教えてください。

ヤマザキ 一次創作をメインにした同人イベント「コミティア」にオリジナル作品を出すために作ったのが始まりです。ただ、実は練りに練って生み出したというわけではなくて、もともと描く予定だった作品を締め切り2週間前に「やっぱりこれは面白くないな」と思ってボツにしたんです。それで、2週間で新しいお話を考えなければならなくなって(笑)。そんな状況の中で生まれたのがこの『魔法使いの嫁』でした。それを新福さんに拾ってもらい、連載用にいろいろと手直しして今の形になりました。

新福 初めてお会いしたのが2012年でしたよね。二人で「もう10年も経ったんだね」とよく話しています。

──イギリスを舞台にした理由は?

ヤマザキ 私はもともと児童文学が好きで、特に子どもの頃は海外児童文学の翻訳が流行っていてイギリスの作家さんの作品に触れる機会が多かったんです。『ハリー・ポッター』シリーズとか、『魔法使いハウルと火の悪魔』とか。それでイギリスに興味を持つようになりました。さらに、日本やアジアのオカルト的な話も好きだったので、イギリスではどんな妖怪がいるのかと調べていくと妖精の話がいっぱいあるんだということがわかって。そういうきっかけや、興味が重なって、イギリスが舞台になりました。

あと、これは実務的な話になるのですが、「日本の背景を描くのは大変」というのも理由の一つです(笑)。日本は多種多様なデザインの建物が軒を連ねていて街並みがあまり統一されてないですが、ヨーロッパ圏は建物のスタイルが確立されているので、最初に調べるのは骨が折れるのですが、一度調べきってしまえば描くこと自体はそこまで大変ではないんです。

──そうなんですね。日本のほうが描きやすそうなイメージがあったので、少し意外です。

ヤマザキ 私が北海道出身というのも関係していたかもしれないですね。やっぱり本州とは全然家の作りが違うので、自分が背景を描こうとするとどうしても北海道風になってしまうんです(笑)。なので、日本人があまり見慣れていない国のほうがいいんじゃないかと思いイギリスを舞台にしたという、打算的な理由もありました。
ただ一番大きな理由は、伝承がいっぱい残っていることです。多くの風習や伝統が本としてまとめられているし、研究もされていて、日本語に翻訳された本もある。そういう意味でイギリスって、ヨーロッパの中でも、かなり〝日本人が手に取りやすいヨーロッパ〟なのではと思っています。

──チセとエリアスというキャラクターはどうやって生まれたのでしょうか?

ヤマザキ さっきもお話したとおり本を出すまでに時間がなかったものですから、二人についても綿密に練って生み出したわけではなくて、気がついたら頭の中にいたという感じでした。考えたことといえば、チセは主人公だから描きやすさを重視して、エリアスは見栄えがするように、ということくらいで。連載として整えるうちに内面がとても面倒くさい……というか、複雑なキャラクターになっていきました(笑)。そうやって生まれた子たちが10年以上経った今も長生きしているのはなんだか不思議な気がします。

──新福さんは、編集者としてヤマザキ先生の描く漫画の魅力はどんなところにあると思いますか?

新福 ヤマザキさんがこれまで調べたり学んだりした知識の多さが、画面の中に言語非言語を問わず入っているところではないでしょうか。その魅力は「再帰性」というキーワードで表現でき、その高さが物語っている気がします。昨今の傾向として、「読んですぐ満足できる作品」が求められることが増えていて、もちろんそれが悪いことではないのですが、彼女の作品は逆に、何度も何度も噛みしめるほどに味が出てくるんです。

あとは普遍性という部分でも魅力があります。絵も物語も、時代の最先端ではないのですが、その分いつ読んでも変わらないものを感じさせてくれる。10年前の中学生も今の中学生も、作品に触れたときに得られる感情はほぼ同じなんじゃないかと思うんです。そういう時代を超えた普遍性がヤマザキさんの作品にはあります。

(C)2022 ヤマザキコレ/マッグガーデン・魔法使いの嫁製作委員会
(C)2022 ヤマザキコレ/マッグガーデン・魔王使いの嫁OAD 製作委員会
(C)2017 ヤマザキコレ/マッグガーデン・魔法使いの嫁製作委員会

アニメージュプラス編集部

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