• 樋口真嗣が明かすアイディアスケッチ集『特撮野帳』メイキング秘話
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2022.12.28

樋口真嗣が明かすアイディアスケッチ集『特撮野帳』メイキング秘話

『シン・ゴジラ』『シン・ウルトラマン』ほか特撮イメージのエッセンスが詰まったスケッチコレクション「樋口真嗣特撮野帳」

『シン・ゴジラ』『シン・ウルトラマン』などを手がけた映画監督/特技監督・樋口真嗣の映像イメージ・アイディアを書き溜めたスケッチが、書籍「樋口真嗣特撮野帳 ‐映像プラン・スケッチ-」(パイ インターナショナル)としてまとめられた。
サブタイトルどおり、本書には『シン・ゴジラ』『巨神兵東京に現わる』『西遊記』『シン・ウルトラマン』『進撃の巨人』2部作の5作品制作時に描かれた映像プラン・スケッチをふんだんに掲載。さらに本文はフルカラー640ページ、新書判変型というこれまでの特撮系書籍とは一線を画した装丁も大きな注目ポイントとなっている。

破格の一冊はいかにして生まれたのか、またそこに込められた思いは何か。著者である樋口監督と本書の編集を担当した木川明彦さん(ジェネット)にお話をうかがった。

――これまでも樋口さんのスケッチ類は一部書籍に掲載されてしましたが、今回このような形でまとめられた経緯をお聞かせいただけますか。

樋口 いや、それはもう単純に「出しませんか?」とお声がけ頂いたわけです。映画のコンテ本なんかは出したことがありましたけれど、こういうものをまとめたのは初めてなんですよ。何でしょうかね……年なんですかね、終活モードというか(笑)。まあ、話を戴いた時の気持ちはまんざらでもなかった、というのが本音です。

木川 最初は樋口さんの足跡をテーマにした「全仕事」的な書籍ということで、ATAC(特定非営利活動法人アニメ特撮アーカイブ機構)さんも交えて、ご相談に伺いました。樋口さんは「数多くのムックは出していただいたが、冠本(単著)というのは、まだ無い」と乗り気を見せてくださって、その際に、ご自身から「今まで描き溜めた測量野帳を形に出来ないか?」というご提案を受けました。

――これほどの膨大な素材はどこに保存されていたのですか。

樋口 私物なので、我が家の押し入れですね(笑)。とはいえ、何か展示会などがある時にはちょくちょく持ち出されていたので、そういうところで目に触れられてきたことが今回のきっかけになったのかな、とは思います。

――本書をまとめるにあたっての基本コンセプトは?

木川 とにかく樋口さんの「肉筆感」を前面に出すことでした。そのために何度かテスト印刷もしていただきました。結果、触ると鉛筆の粉が付くんじゃないか、と思うほどの生々しさになったと思います。
▲「樋口真嗣特撮野帳」より『シン・ゴジラ』 (C)2016 TOHO CO,LTD.

――掲載されているスケッチ素材は、どういう基準でセレクトされたのでしょうか。

樋口 木川さんがメインで選んで、最後に俺が調節した感じです。権利関係の問題だったり、あと自分としては「これはお見せできるレベルではない」みたいな判断もありますし、途中までしか描いてないものもあるので……。本当はもっと(素材を)スキャンしてもらっているんですけれど、さすがに全部は出せなかったです。

見ていただければわかるんですけど、全部絵というわけではなくて自分のメモ書きや新規で書いた解説文も掲載しているんですね。それらの配置も結構大変な作業だったので、そういうところも注目してほしいですね。

木川 手書きの解説文はポストイット風に処理しています。実はノンブルも0~9まで手書きしていただいて、貼り付けているのです。

――今回の書籍サイズを選んだ理由は何でしょうか。普通、こういった特撮作品の資料本はもう少しサイズ感が大きいビジュアル本として出版されることが多いですが……。

樋口 実際に自分が描いていたコクヨの測量野帳(測量士用のミニノート)がこのぐらいのサイズだったので、その形に準じたらいいんじゃないか、というのがひとつ。あと、普通の体裁よりももっと欲しくなるような物って何だろうか? と考えて、電子書籍には出せない魅力を持たせられるし、手元に置いておきたいと思えてもらえるんじゃないかと考えて、編集部の皆さんに無理を言って実現してもらいました。

木川 なので、タイトルは企画書の段階から「特撮測量野帳(プランメモ)」としておりました。そこからさらにシンプルに「特撮野帳」となり、発売時期も見えてきたところで、読者にも分かりやすく、ということで「映像プラン・スケッチ」というサブタイトルを追加しました。最終的には野帳というよりも、バイブルみたいなボリュームになってしまいましたが。

――野帳をアイディアノートとして使われている理由は?

樋口 罫線が引かれているので描きやすいし、しかも薄い青で印刷されているので、コピーした際には全部抜けちゃって都合がいいわけですよ。他にも小さくて邪魔にならない、表紙が硬くて描きやすいし耐久性がある、何より安価であるなど、利点がいっぱいあるからですね。

アニメージュプラス編集部

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