• 『大怪獣ブゴン』田口清隆監督が語る「ローカル怪獣映画」の魅力と可能性
  • 『大怪獣ブゴン』田口清隆監督が語る「ローカル怪獣映画」の魅力と可能性
2022.12.07

『大怪獣ブゴン』田口清隆監督が語る「ローカル怪獣映画」の魅力と可能性

(C)別府短編映画制作実行員会

新型コロナで打撃を受けている大分県・別府市の活性化を目的に、リレー方式で地元を舞台にしたオリジナル短編映画を制作するプロジェクト「別府短編映画プロジェクト」。その第2弾として別府にて限定公開されて話題になったのが『大怪獣ブゴン』だ。
本作の脚本・監督を担当したのは、「ウルトラマン」ニュージェネレーションシリーズの主力監督として活躍する田口清隆さん。『ブゴン』誕生の経緯からその魅力まで、お話をうかがった。
▲(左)別府ブルーバード劇場の館長・岡村照さん、田口清隆監督

――本企画はどういうところから始まったのですか。

田口 プロデューサーの森田真帆さんから電話が来たのがきっかけです。森田さんは「Beppuブルーバード映画祭」を手がけていて、そこで「全国自主怪獣映画選手権 別府大会」という催しをやらせていただきました。その時に地元の怪獣愛好家たちの集まりである「大分怪獣クラブ」が造ったオリジナル怪獣・ブゴンの着ぐるみがお披露目されていたんです。そういう縁もあって「ブゴンで怪獣映画撮りませんか?」というお話をいただきました。

僕は今、YouTube限定公開で『UNFIX』(2018~)という自主映画も撮っているんですけれど、「別府でロケできるんだったらこっちもついでにロケできないかな」という考えもあって、『ブゴン』に出てくるメインキャスト4人を丸かぶりにさせて、脚本も当て書きにしました。

今回は別府短編映画プロジェクトの1本だったので、当初10分程度の作品を考えていたんですけれど、結果的には20分くらいの映画になりました。僕の大好きな『ゴジラVSスペースゴジラ』(1994)に、ゴジラが別府へ上陸する場面があるんです。そこで当時の撮影場所を探して同じアングルで撮りました。特に別府タワーに迫る場面は、20年以上経った今でも意外に風景が変わっていなかったので、その雰囲気を出すことができました。

――撮影するにあたり、何か条件的なものはありましたか?

田口 「ブゴンは悪い怪獣じゃない」というのが前提にありました。ゴジラのように街を破壊していくわけにはいかなくて、ブゴンに当たった砲弾が跳ね返って被害を及ぼす、みたいな描写になっています。

街おこしの短編映画、と聞くと小品の出来栄えと邪推してしまいそうだが、観れば間違いなくその認識は改めさせられるだろう。巨大怪獣の描写は勿論のこと、爆破シーンや自衛隊の描写なども一般作品と引けを取らない迫力に満ちている。さすが特撮の第一線にいる田口さんの面目躍如という出来栄えだ。

――ホテルを実際に爆破・破壊したシーンは迫力がありました。ロケ地となった杉乃井ホテルで爆破シーンを撮る、という算段は最初からあったのですか?

田口 企画段階ではなかったんですが、スポンサー集めで地元を回っている際に出てきた話と聞いています。そこで、シナリオハンティングしている時に杉乃井ホテルさんに行ってホテルのロビーで爆破シーンを撮る許可をもらったんです。もちろん本当にホテルを火薬で破壊しているわけではなく、セメント粉を火薬で吹き飛ばして、大爆発に見せています。
杉乃井さんは本当にきれいな高級ホテルで、撮影前日まで営業していました。爆破に使える日程は3日間ほどしかなくて、しかも本撮影とホテル爆破撮影は別の日だったので大変でした。
客室のフロアでヒロインが走りながら爆破をくぐり抜いていく場面は、俳優に別のスケジュールが入っちゃって、撮影当日は偶然彼女と背格好が似ていたレポーター役のフリーアナウンサーの方に走ってもらいました。

――登場する戦車のリアリティにも驚かされましたが、どんな撮影を?

田口 戦車はミニチュアと本物を編集で差し込む形で描写しています。CGは使っていません。大分県内に駐屯地から演習場に向かう ”戦車道“ と呼ばれている公道があって、実物を撮影できちゃうんです。そのカットは僕らが東京に帰った後、監督補の松尾(良崇)さんに1日張り込んでもらって撮ってもらいました。
ミニチュアは一〇式戦車のラジコンと、地元のプラモデラーの方に一六式機動戦闘車を作ってもらい、なるべく現地の空を背景に地面のところだけ合成して撮っているんですよ。

(C)別府短編映画制作実行員会

アニメージュプラス編集部

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