• 谷口悟朗監督が藤津亮太に迫る「アニメ評論家」という仕事とその現実
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2022.10.01

谷口悟朗監督が藤津亮太に迫る「アニメ評論家」という仕事とその現実

(左より)藤津亮太氏、谷口悟朗監督


谷口 ちなみに、評論家として名前はやっぱり売っておいた方がいいとお考えですか? 例えば、朝のワイドショーのコメンテーターなんかをやるとか……。

藤津 特に名前は売りたくはないんですけれど(笑)、仕事が途切れないように自分の芸風を広く知っておいてもらいたい、とは思います。

谷口 大学の非常勤講師をやられていたわけですから、「権威」を武器にする手もあるわけですよね。

藤津 学生に教えることで自分の勉強にしている部分があるからやっているので、大学人になるつもりはないですね。非常勤講師の肩書は、これがあるとヒトネタ加わるとか、イベントの主催者が便利に感じるであろうという時以外は使わないです。できるだけ長く書いていければいいな、というのと、もう少し仲間が増えてほしいというところがあります。

谷口 では、アニメ評論家が増えない理由は何だと思いますか。

藤津 面倒くさい仕事だからですかねぇ、あと何と言っても儲からないです。どうしても単価の安い、短いスパンの仕事が多いので。

谷口 うーん、哀しいなぁ。YouTubeとかやったらどうです?

藤津 実は動画配信(ニコニコ動画とyoutubeで「アニメの門チャンネル」配信中)もやっているんですが、煽情的なことは言わないので、まあ苦労しています(笑)。

谷口 あはははは。ご苦労も多いようですが、藤津さんには今後もアニメを観慣れていない方やこれからアニメを勉強しようという方たちに、モノの見方や深さを教えて言っていただける伝道者であってほしい。これだけの作品数がある状況の中では絶対に必要なものですし、できればそういう人がいっぱいいてくれた方がいいんでしょうね。

藤津 若い頃には、こういう書き手がいっぱい出てくるんじゃないかと思っていたんですけれど……僕のライター・デビュー時は、ちょうど『新世紀エヴァンゲリオン』のブームの後でいろんな人が論評を書いている時期で、そういう流れにひょいと乗れたのも良かったんだと思います。今はいろんな理由があって、そうはならないんでしょうね。あと、評論家を名乗るといろんな責任を負わなければならないので(笑)。

谷口 文芸や音楽の評論がこれだけあるのにやっと出てきてくれたのか、というのが正直な印象ですから。これから続いてくる後続の方に期待することはありますか。

藤津 今はnoteみたいな発表の場もあるので、まずは定期的に書いてみた方が良いと思います。名前を出して書いていけば原稿も溜まりますし、ライターにとってはプラスなんですよ。そこで編集者に見つけてもらうという流れもあるでしょうし。ただネットの仕事がメインだと、代表作は作りにくいんです。何だかんだで、ライターのキャリア形成においては、紙の本の果たす役割は大きいです。

谷口 紙の本を作る過程で、社会的信用も付いてくるからでしょうね。まさに、今回の本のような形にする、ということですね。そういう意味でも藤津さんは伝道者であると同時に先導者でもあるわけですから、ここは生き様死に様もひっくるめて、しっかり後進に見せてもらわないと(笑)。「ああ、ここでテレビのコメンテーターになってしまったのか」だったりね。

藤津 いやいや、なりませんから(笑)。

>>>藤津亮太氏&谷口悟朗監督の対談の様子を見る(写真8点)

アニメージュプラス編集部

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