• 『彼女、お借りします』EDを手がけるMIMiNARIに聞く「泣けない」秘話
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2022.09.05

『彼女、お借りします』EDを手がけるMIMiNARIに聞く「泣けない」秘話

MIMiNARI『泣けない feat.こはならむ』

アニメ『彼女、お借りします』第2期エンディングテーマ「言えない feat.asmi」が話題のクリエイターユニットMIMiNARIが、8月31日にCD『言えないEP』でデビュー。同作には、「言えない feat.asmi」をはじめ、ネットで話題の「消えない feat.春茶」「見えない feat.natsumi」、そして新曲として『彼女、お借りします』のヒロインの一人である七海麻美をテーマに制作した新曲「泣けない feat.こはならむ」を収録。麻美を見事に表現した「泣けない」の制作秘話、『言えないEP』について、そして「○○ない」という否定から生まれる楽曲の魅力について、MIMiNARIのnariとshamに聞いた。

【関連記事】『彼女、お借りします』EDを手がけるMIMiNARIに聞く「言えない」秘話(前編)

「泣けない」は、麻美の気持ちをあれこれ考察しながら制作

――8月31日には、「言えない feat.asmi」をはじめとした4曲を収録したCD『言えないEP』がリリースされます。新曲として収録の「泣けない feat.こはならむ」は、木ノ下和也の元カノである七海麻美ちゃんの心情が、すごく表現されていると思いました。

nari:「泣けない」は、完全に麻美をイメージしました。「言えない」の時は曲ができてからasmiさんにオファーさせていただいたんですけど、「泣けない」は、“こはならむ”さんに歌ってもらうことを前提に曲作りが始まりました。こはなさんの歌は個人的に以前から聴かせていただいていたので、いつか一緒に制作したいなと思っていたんです。そこで今回こういう企画でオファーさせていただいたところ、快く引き受けてくださって。

sham:私もずっと彼女のYouTubeチャンネルを観させていただいていて、その中では結構キーの高いところまで使って歌っている動画がたくさんあったんですけど、「泣けない」では、そのさらに上をいく高さのキーを設定させていただきました。結果的に、こはなさんの叫び声に近いような感情の爆発みたいなものを、引き出すことができたと思います。

――確かに麻美はアニメを観ていても、感情のまま叫んでいることが多いイメージです。歌詞には〈もううんざり〉というフレーズもあって、これはセリフにも出てきます。

sham:はい。作品のセリフから引用させてもらいました。

――セリフと言えば、〈嘘つき……。〉をセリフっぽく歌っているのも印象的でした。

nari:そこは、こはなさんから提案していただいたアイデアです。こはなさんのこれまでの楽曲にも結構セリフが出てくるので、楽曲のどこかで入れたいと思っていたんですけど、こはなさんのほうから〈嘘つき……。〉をセリフっぽく言いたいとアイデアを出してくれました。

――冒頭に〈もう えんえんえんって〉とあって、「えんえん泣く」という表現がどこか子どもが泣くようなイメージで、でもそれがすごくいい感じだと思いました。

nari:ここはメロディを作る段階から、このワードが浮かんでいました。歌詞で、〈えんえん〉と〈永遠〉、〈円〉、〈縁〉、さらに〈全然〉とか〈延々〉など、韻を踏んだワードを織り込みたいと思って。〈えんえん〉という言葉を選んだのには、サウンドが激しいのでどこかでキャッチーな部分を入れたいと思って、あえてあまり使わないような言い回しを使ったところもありますね。

――和也と千鶴の嘘に対する怒りとか、自分がやっていることに対しては、きっと自分でも呆れているんだろうなとか、楽曲からは麻美の複雑な心境が伝わります。

nari:でも本当の気持ちは、まだ僕らにも分からないので、きっとこうなんじゃないか、ああなんじゃないかと、僕らもあれこれ考察しながら書いた感じです。オチサビの前は願望を歌っているんですけど、本当は素直になりたいという気持ちが、きっとどこかにあるんだろうなと想像して書きました。

――ラップのパートでは、歌詞に〈消えない〉、〈見えない〉、〈泣けない〉、〈言えない〉と、これまでの4曲のタイトルが全部出てきます。

nari:そこは狙いました(笑)。4つとも全部が、麻美というキャラクターに当てはまるとも思ったし、『言えないEP』という作品を締めくくる楽曲でもあるので、4曲でワンセットみたいなイメージで全部入れたいなと思いました。

sham:あと音的な特徴で言うと、EPの4曲の中でこの曲だけあえて異質になるように、他の3曲とは違ったミックスの処理を施しています。他の3曲は淡く滲むようなアナログ感のある音像ですが、「泣けない」はサウンドと歌詞のエッジを生かした、音立ちがはっきりした方向性にしました。とにかくサウンドが激しいので、滲むような感じではサウンドの良さが引き立たないし、麻美は4人の中でもかなりエッジが立った個性的なキャラクターなので、その部分も汲み取ることができたらと思って、こういうミックスにしました。



たった一文字変わるだけで、表現される感情が全く変わる

――楽曲はどれも「○○ない」という否定形のタイトルですが、歌詞の中で例えば「言えない」なら〈“言えない”ままでいいの〉と、二重否定することで肯定を促しているように思いました。単なる否定に終わらず、少し前向きさがプラスされた聴後感になる。

nari:二重否定を使うことで、気持ちの裏側が表現できたらと思いました。その面白さは、たった一文字変わるだけで、表現される感情が全く変わってしまうことです。日本語の魅力であり、面白さでもあります。それにMIMiNARIというユニット名もネガティブさを持った言葉なので、そこからのある種の裏切りもあります。MIMiNARIという言葉がもたらす記憶めいた、頭の中で鳴るものを表現しているイメージが、意図せず曲や歌詞ともうまく馴染んで、相乗効果が生まれていったと思います。

sham:“言えない”ということは、本当は言いたかったり、どこか主体性を持っていたり、ポジティブなところがあるからこそ、言うことができないんです。「○○ない」は単純な否定ではなく、幅広く意味を含ませることができる言葉かなと思いますね。本当は○○したいけど、したくないのかできないのか、いろいろ想像しながら聴いてもらえたらうれしいです。

――「言おう!」ではなく、〈“言えない”ままでいいの〉のほうが、今の若い世代にはすごくしっくりくるんでしょうね。

sham:感情というものは、0か100では表せないものなので、その曖昧さをタイトルや歌詞から感じ取ってもらえたらうれしいです。

――最後にこのEPを聴く人に、どんな風に楽しんでほしいですか?

nari:『言えないEP』は、『彼女、お借りします』という素敵な作品に登場する、いろんなキャラクターの心情にも置き換えられる楽曲が並んだ作品です。アニメファン、音楽ファン、それ以外のファンにも楽しんでほしいです。

sham:4人のボーカリストに参加していただいて、たった4曲ですけどすごく聴き応えのある作品になりました。アニメと共に、すみずみまでお楽しみください!

アニメージュプラス編集部

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