• 『イヴの時間 劇場版』福山潤×佐藤利奈×田中理恵14年ぶりの邂逅
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2022.08.26

『イヴの時間 劇場版』福山潤×佐藤利奈×田中理恵14年ぶりの邂逅

(C)2009/2010 Yasuhiro YOSHIURA/DIRECTIONS, Inc.

今だから観たいゼロ年代に話題を呼んだ、「その時代のマスターピース」とも呼べるアニメ作品をピックアップしていく、U-NEXTによる名作との「再会」プロジェクト「THE PLAYBACK」。
その第3弾は『イヴの時間 劇場版』だ。


主人公の高校生・リクオを演じた福山潤さん、法律の目をくぐってアンドロイドと人間を分け隔てなく扱う喫茶店「イヴの時間」の女性マスター・ナギを演じた佐藤利奈さん、リクオの家でハウスキーパーの役割を果たすハウスロイド(アンドロイド)のサミィを演じた田中理恵さんに作品やキャラクターについての想いを、あれこれ語ってもらった。作品テーマでもある「AIと人間の関係性」にも話が及び、単なる「思い出話」に留まらないトークとなった。
▲(左から)田中理恵さん、福山潤さん、佐藤利奈さん

──皆さんはそれぞれどういう思いを持って、当時『イヴの時間』に臨まれましたか?

福山 当時僕が感じていたことは「普通の作品をやりたい」ということだったんですよ。

──「普通の作品」というのは?

福山 ちょうど当時は、僕のキャリアとしては若手から少し抜けたくらいだったんですけど、極端に言えば役者の会話(お芝居)ではなく作画のアクションで見せる方にウエイトが置かれた作品が、やっぱりアニメでは多かったんです。あるいは、本当にアーティスティックに寄せた作品では、逆に我々声優はあまり関わらなくて。

『イヴの時間』はAIという近未来の題材を扱いながら、会話劇が繰り広げられる。しかも、SFですけれど「人のことをどう思うのか」「どう思われているのか」「自分はどうしたいのか」といった、身近な人間同士の関係性にスポットを当てた「普通の作品」というカテゴリーにガッツリ入っていたんですよ。

その中で、自分が今までやらせて頂いてきた少年役の土台の上に、何か新しいことが出来ることがあるのではないか? という思いがありました。収録方法から作品のテイストまで、全てポジティブに楽しく臨ませて頂いた思い出があります。

佐藤 アフレコの段階でもう映像はほとんど出来上がっていたような状態だったんです。SEも入っていて、カメラワークも完成映像と同じ状態で。「うわ、すごい作品だ!」って(笑)。実写映画みたいなアニメーションの空間の広がり方……パースであったり、人物に寄っていくときのカメラの動き(ズーミングによる画角変化)を見て、「初めてこういう感じのアニメ作品に携わらせてもらったかも?」っていう感じで。

収録方法も、全員で揃って録るのではなくて、別録りした人の声を聴きながら、そこにあえてバンバンセリフを被せて言っていくというお芝居の仕方が、心地よくて。すごく贅沢な時間だったなぁって。
みんなが「新しいものを作るんだ!」「俺たちはこういうのをやってみたいんだ!」っていう、熱量の高さがすごく感じられて。そこに混ぜてもらえたことが、今でもすごく幸せなことだったなと思います。

──田中さんはいかがですか?

田中 あの時の年齢の私としては、すごく特殊な役を演じることが出来るのかなっていう不安と……。それとこれはすごいチャレンジだなっていうのがありましたよね。あの時の私の歳って……。

福山 僕ら、3人みんな20代でした。

田中 でも振り返ると、20代だからこそあの(ナチュラルな)芝居が出来たのかなって。見返したときにはすごく新鮮だったり、「ああ、みんな(の演技が)若いぃ~!」とか思ったりして(笑)。と同時に、すごくメリハリをつけなくちゃいけないというプレッシャーの中でサミィを演じていたのを思い出しました。機械然としてるロボットの時と、全然違う人間っぽい時の演じ分けは、当時難しかったですね~(笑)。いや、今やっても難しいんじゃないかなと思っていて。

佐藤 なんと、そうだったんですね。見ている我々としては、そんな感じには思わなかったです。

──ミニシリーズのWebアニメから劇場作品になったわけですが、その話を聞いたときはどう感じられましたか?

福山 嬉しいという思いがまずありました。いうなれば日常を描いている……登場人物それぞれの中に変化や成長を求めていったり、今ある問題を寓意的に置き換えている作品が確実に受け入れられていることを感じられましたから。ただ、当時の僕は若かったので、もし劇場版にするのであれば、それ用に再度録り直したい思いもあったんです。

──アフレコはし直していないんですね?

福山 ええ。今にして思えば、この形でよかったなと思ってます。というのも、(物語の)時間の連続性はあっても、芝居自体に同一性はないので。6本取り進めていく中で、いうなれば収録ごとにブリッジがはいったお陰で、ナギたちの気持ちについて、その都度の解釈と熟成があって、そこがシリーズとしてちゃんと繋がっているので、仮に違和感を持つところがあったとしても、それはありなんじゃないかなって。

佐藤 劇場版になるって聞いて、嬉しかったですよね。特にナギとしては、プラスアルファされたシーンが彼女にとって意味のあるものだったので。(EDロールで)物語の始まりみたいなところが補完されて、そこで私も「ああ、なるほど!」と知った部分も大きかったです。

でもこれを全部知っちゃった上で、演じることにならなくて良かったなって逆に思ったりもして。それだときっと、自分の中でナギの気持ちがすごくウエットな方向になってしまいそうで。潮月と沢山の経験をして乗り越えて、今イヴの時間を開いているから。私が感じるような感傷的な思いは、現在進行形ではないかもしれなくて。それをいっぱい呑み込んだ上で、カラッとした気持ちを出すということが、あの頃の私には出来なかったんじゃないかって思うんです。

でも今も、そういう(悲しい過去を越えた上での陽的な)ナギを演じられるんだろうか?っていうのもありますね。年齢を重ねてしまったが故に、いらないことも沢山考えるようになってしまっているので、それが吉とでるか凶とでるかは、『イヴ』に関しては分からないところがあるんです。でも劇場版は、一貫した一つの物語にして下さった感じがあって、それが嬉しかったです。

(C)2009/2010 Yasuhiro YOSHIURA/DIRECTIONS, Inc.

アニメージュプラス編集部

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