• 舞台『機動戦士ガンダム00』で水島精二監督が守り続けたブランド力
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2022.08.06

舞台『機動戦士ガンダム00』で水島精二監督が守り続けたブランド力

(C)創通・サンライズ


――ガンダムファンを納得させるハードな設定を固める一方で、キャラクタービジュアルは華やかにまとめられていますが、これも水島監督の狙いですか?
▲刹那・F・セイエイ▲リボンズ・アルマーク

水島 こんな世界観でハードな話を作る、と言った時、池谷プロデューサーが「キャラは貞本義行さんのような少年マンガ的な方向性がいいんじゃないか」という話をしていたんですが、僕としてはそれだとバランス的に偏ってしまうという印象があったので、ここは高河ゆんさんに頼もうと思いついて。
サンライズから何人か推薦があったので結局オーディションをすることになり、高河さんにもオーディションへの参加をお願いしましたが、上がってきたものを見たらやっぱり高河さんのデザインが一番良かったわけです。

――女性ファン層の支持が広がった一因は、キャストの豪華さにもありましたよね。

水島 今になって見ると確かに豪華キャストかもしれないけど、当時はそんなこともなかったんですよ(笑)。神谷(浩史)君は黒田さんが仲良くて、ティエリアが決まらない時に「1回オーディションに呼んでくれませんか」と言われて、それで決まった感じですからね。
アレルヤも、音響監督の三間(雅文)さんから、「二重人格を1人でやらせるなら、キレた芝居ができる人がいい」と吉野(裕行)君を推薦してもらったんですが、彼も宮野(真守)君も、当時は主演をバリバリやっているという時期では無かったし、中村悠一君だってまだそこまでのブレイクはしていなかった。唯一、三木眞一郎さんだけは兄貴分のキャラクターだということでお願いしましたけど。

――先程「メディアミックスには積極的に関わるようにした」とおっしゃっていましたけれど、具体的にはどういうことを?

水島 当時のバンダイ ホビー事業部の馬場俊明さんから「ガンプラを買ってくれる層をもう少し広げたい」とオーダーがあったんです。刹那は銃を撃つのが苦手、という設定があるのでエクシアは剣で戦う、みたいなアイデアを黒田さんがいろいろ出してくれて、「じゃあ、エクシアのボディスタイルはマッシブな感じにしたいね」と海老川(兼武)君にプロレスラーのような筋肉質のスタイルに調整してもらったんですね。そういう部分も含めて、ガンダムに求められる商売の部分もきちんと消化した上で、面白いものを作ろうという意識がありました。
▲ダブルオーガンダム

――デザインや演出にまで反映されるほど細やかな配慮をされていたとは。

水島 『鋼の錬金術師』に関わった時、関連商品の売り上げがプロジェクトとしてはとても大事だと聞いていましたし、偉い人たちから「アニメを軸にどのような商売ができるのか」みたいなこともすごく言われましたから。
今までだったら現場スタッフは監修のみということだったんでしょうけれど、朗読劇と生ライブをくっつけた「MBSアニメフェス」というイベントなどにも参加するようになって、こういう形態でファンに作品を届ける際にもコアメンバーが参加していれば、いろんなことにもキチンと対応できる。だから、僕は『ガンダム00』の周辺イベントも「自分でやる」と宣言して関わらせてもらっています。

――そういう部分も含めて、水島監督は『ガンダム00』というブランドをしっかりと守っていらっしゃる印象があります。

水島 僕がプロデューサー気質の監督だと言われるのは、そういうところだと思います。アニメだけ作って「商売は知らん」みたいなのはダメなんです。やはり、世の中に出るものに対して自分の意見を言いたいし、自分の作ったものを曲がった形にしたくないし、メディアによって変化が出てくるなら、そこは知っておきたいタイプなんです。作品を独り占めしたいのではなくて、その世界を広げるならばちゃんと協力したい。

――『ガンダム00』が長く愛される作品になっているのは、そこをしっかりやって来た結果なんでしょうね。

水島 『ガンダム00』の企画に参加した時、当時サンライズにいた宮河恭夫さんに呼び出されて「僕はクリエイティブなことはよくわからないけれど、10年後も売れている作品を作ってほしい」と言われて「それをやろう!」と思いましたね。これまでのシリーズとは軸が違うことを明確にして、現実世界に照らし合わせた、いろんな人たちに引っかかる要素をきちんと押さえながら観た人の心に残る、新しいガンダム像――それが『ガンダム00』なんです。

水島精二(みずしま・せいじ)
アニメーション監督。『新世紀エヴァンゲリオン』(1995)の演出などを経て、『ジェネレイターガウル』(1998)で監督デビュー。主な作品は『シャーマンキング』(2001)、『鋼の錬金術師』(2003)、『大江戸ロケット』(2007)、『機動戦士ガンダム00』(2007)、『UN-GO』(2011)、『楽園追放 -Expelled from Paradise-』(2014)、『コンクリート・レボルティオ~超人幻想~』(2015)、『BEATLESS』(2018)、『フラ・フラダンス』(2021)など。

>>>舞台『機動戦士ガンダム00-破壊による覚醒―』キャストの熱演を見る(写真32点)

(C)創通・サンライズ

アニメージュプラス編集部

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