• 舞台『機動戦士ガンダム00』で水島精二監督が守り続けたブランド力
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2022.08.06

舞台『機動戦士ガンダム00』で水島精二監督が守り続けたブランド力

(C)創通・サンライズ

2022年2月7日~14日まで上演された舞台『機動戦士ガンダム 00 -破壊による覚醒-Re:(in)novation 』が、この度Blu-ray&DVD化された。TVアニメセカンドシーズンのエピソードを約3時間に凝縮した本舞台は、これまでの『ガンダム』という作品概念を大きく更新した画期的な内容に仕上がっている。
これは『機動戦士ガンダム00』という作品そのものの懐の深さが成したものではないか――本舞台に監修として携わった水島精二監督に、改めて『ガンダム00』という作品の出発点、またいかなる形でブランディングを進めたかについて語って頂いた。(前編/全2回)

――舞台に触れる前に、改めて水島監督が2007年の『機動戦士ガンダム00』を手掛けることになった経緯を教えて頂けますか。

水島 僕に声が掛かったのは『機動戦士ガンダムSEED』と続編の『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』の間に放送された、『鋼の錬金術師』の監督をやっていたということが大きかったです。当時の毎日放送プロデューサーの竹田靑滋さんが僕と脚本の會川昇を評価してくださっていて、その後企画を立ち上げる時に、サンライズのプロデューサーの池谷浩臣さんが監督候補として僕をリストに入れてくれていたのを見て、竹田さんが「水島君がいいじゃないか」と推してくれたんですよ。
自分としても、いわゆる「土6」と言われる全国27局ネットというメジャー枠で、原作に頼らないオリジナリティを出せる作品を作れるという部分に魅力を感じました。

――『ガンダム』というブランドを手がけるに当たり、どういった部分を重視されましたか?

水島 やはり広くいろんな方に観ていただける枠なので、ガンダムだからこそできる、いろんな商品やゲームなどで広がっていくメディアミックス展開ですね。それもお任せにするのではなく意識的に我々現場側の人間が関わっていくようなやり方ができないか、と考えました。
竹田さんが元々報道上がりの方で、「土6」という枠でキチンと現実と向き合っているものを届けたい、ということを常々言われていました。それは必ずしも主人公に都合のいい世界ではない、という部分で、それを『鋼』でやった僕と會川さんにガンダムを、というのが竹田さんの頭の中にはあったと思います。ただ、サンライズから「もっとジュブナイルっぽいものを」という要望があり、脚本は黒田洋介さんと組むことになったんです。
とはいえ、現実に根ざした戦争を描くということを自分で目指した以上は、そのラインも推し進めていこうと最初から思っていました。

――それ以外に、サンライズから何らかの提案のようなものはありましたか?

水島 「コズミック・イラ」を継いで『ガンダムSEED』と同じ世界観でやるのもアリだ、という提案はありましたが、やはり(サンライズの)外から新しい監督が来るということは「変化」を欲しているのではないかと思っていたんです。
実は、その段階から作品の世界設定を西暦でやりたいと思っていました。戦争を描くにあたって、過去の歴史を振り返ることがある場合、それがいわゆる「仮想の歴史」だと逃げになってしまうのではないかと思ったんです。

――作品の中の戦争は、2つの世界大戦などリアルと地続きの出来事である、と。

水島 そうです。あと富野(由悠季)さんの「宇宙世紀」は西暦と繋がっていると思うんですが、一部のマニアの人たちはガンダムが兵器であるということから目をそらすためにフィクションとしての「宇宙世紀」を作ったと解釈している、という話を聞いたりもしたんです。
ガンダムは間違いなく戦争の道具なんです。しかし、その悲劇性にスポットを当てるだけでなく、ガンダムというキャラクターの可能性をどう広げていくかという2つの要素のバランスをすごく考えながらやっていました。視聴者に「カッコいい!」と思ってもらえる物語性やメカとしての魅力も、きちんとコンセプトに落とし込んで描いていけたらと思っていました。

――西暦を背景とした未来の世界を描くにあたり、どのような部分を意識しましたか?

水島 地域性をすごく意識しました。世界をヨーロッパと中国、そしてアメリカの3つに分けたのは、かなり極端ですが判りやすさを重視した結果です。極端ではありますが、自分の目から見た世界を忠実に落とし込むための舞台という感じですね。
あと、中東の小国を物語のスタート地点にしたのは大きいかもしれないですね。攫った少年を兵士にするというのは、実際に起こっていて社会問題にもなっていた。そこに平和な日本の若者が目を向けるきっかけになってほしいと思って、主人公の刹那に日本人から見て一番理解しづらいキャラクター性を持たせることは、最初から狙ってやっていました。
そういった戦争に麻痺した感覚は、実は自分も共有しているわけです。しかし、そういう戦争の背景や歴史を物語のベースに置いておかないとダメだと思いましたから、このタイミングでそれらに関して一気に勉強しましたね。

また、軍事評論家の岡部いさくさんに、300年後の世界でどんな戦争が起こりえるか、その時に日本はどういう立場にあるのかを一緒にシミュレーションしてもらったり、ハードSFがめちゃくちゃ好きなメカニックデザインの寺岡賢司さんやスタジオオルフェの千葉智宏さんにも入ってもらって、世界設定を詰めていきました。
とにかく、今までのサンライズがやっていたのとは違う取り組み方をするのが僕に与えられたミッションだ、と勝手に思ってやっていた感じです。

(C)創通・サンライズ

アニメージュプラス編集部

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