• Creepy Nuts「堕天」が刺激的に描き出す『よふかしのうた』の風景
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2022.07.26

Creepy Nuts「堕天」が刺激的に描き出す『よふかしのうた』の風景

Creepy Nuts(左よりR-指定、DJ 松永)


――さてオープニング・テーマ「堕天」なんですが、曲の中にいろんな要素が混じり合っていますね。

 そうですよね、ジャズをファンキーな感じにしたような……自分の頭の中に鳴っている音を形にしているんですが、ジャンルが何なのかは自分でもわからないっていう(笑)。他の人たちからは「ブーガルーじゃないか?」って言われて、僕もそのジャンルを聴いてみたんですが、そうでもないような。

――いきなり歌から始まるのもインパクトありましたね。

 あれ、一度やってみたかったんですよ! オープニングの演出的には前奏があった方が良いのはわかってたんですが、良いイントロも思いつかなかったし、自分のクリエイティブ欲を優先して、いきなりラップから始める形にしちゃいました。レコード会社の人も「これ、大丈夫ですかね?」って心配していたんですけれど、「向こう(アニメのスタッフ)はプロだから!」と完全な無茶振りをしたという(笑)。

――間奏でちょっと雰囲気が変わるところも面白いです。

 そもそもヒップホップってびっしり言葉が詰まっているものなんですが、僕らは最近間奏を入れるように意識しているんです。間奏は最後に作ったんですが、今回は「堕天」というタイトルでもあるので「リスナーを一度どん底へ落そう」と思って、間奏でリスナーを一回暗闇に連れて行って、またサビで明るい世界に戻る、みたいな構成にしました。

――この曲を受けて、R-指定さんの詞はどういうコンセプトでまとめられましたか。

R ヒップホップの歌詞は自分のことを歌うというのが基本で、自分たちもそうだったんですけれど、前作のアルバム(『Case』)でそれを一旦やり切ったという手応えがあったんですね。そのタイミングでこの話が来たので、だったら俺の話じゃないフィクショナルなことを書こうと。原作の二人の関係や恋愛を自分なりに解釈して書いたら、こういう内容になりました。

特に主人公のあの年齢だと、人を好きになったことでこれまで知らなかった他人の汚い部分やカオスな部分に触れざるを得ないと思うんです。そういうところもイメージして「堕天」ということになったんですよね。もっとも、他人をイメージして書いていても、自分のことはどうしても入って来るので、自分もそんな風に思ってたんやろうな、と。

――続いて、挿入歌「ロスタイム」についてお聞かせ下さい。先ほどコトヤマ先生と話をされて進めたとおっしゃっていましたが……。

 そうそう、最初はスタッフの方とお話させていただいていたんですが、どうも狙いがピンとこなくて、Rが「だったら、コトヤマ先生と直接話をしたほうがいいかも」と。

R そうだった! その時さっき言った歌詞の内容のやり取りをしたんです。で、昨年は松永さんが覚醒していて、すごい量のビートを作っていたので、その中から良さげなものを選んで、言葉を載せていった感じですね。

 あれは昨年の春くらいに作ったものですね。作っててラッキー!って思いました(笑)。

――何か具体的なイメージはあったのですか。

R 絵コンテも貰ってましたし、原作も読んでいたので「ああ、あの場面に流れるのか」と。コトヤマ先生からは「夜の街の情景を描写してほしい」というオファーがあったので、俺からは逆に「『よふかしのうた』の夜は、コトヤマ先生の中ではどこの夜なんですか?」と訊いたんですね。

――ああ、イメージソースが何なのかを。

R そしたら「大都会ではない、絶妙な寂しさがある郊外の街」みたいな答えが返ってきて。俺の地元もそんな感じのベッドタウンだったりするから、たまたま3日くらい休みがあった時に帰省して、松永さんのビートを聴きながら独りで夜の街をブラブラ歩いたんですね。その中で、眠る街の中にポツンと立ちつくした電信柱や自動販売機に感情移入できたんですよ。

――それはどういうところにですか。

R そこそこ田舎なので夜だと暗い通りも結構あって、そういうところを歩いている時は怖いんですよ。そういう時に自動販売機の明かりを見つけると本当にホッとして、「ここにいてくれてありがとう」みたいな気持ちになったんですね。そこから、彼らを擬人化してみよう、という風に思ったんです。

――まさにR-指定さんの「よふかし体験」が活かされたわけですね。

R そうなんですよ(笑)。何より、松永さんのビートを聴いていると、自分の見ている夜の風景と見事に溶け込んでいくんです。よく「楽曲を聴いていると、その世界を体験できる」って言うじゃないですか。まさにそれを味わった感じで。

 俺、良いトラックが出来た時、自分の携帯に移して移動する時に聴いたりするんですよ。このトラックを聴きながらタクシーで都内の夜を走りながら「合うな~」とは思ってたんだけど、郊外の夜にもいけたっていうのは嬉しい。

R いや、あれはどこの夜でもいけるよ!

――では最後に、『よふかしのうた』という作品の魅力はどこにあると思いますか。

R 俺は「人ならざる者」と人間との交流、という物語が好きで。元々ホラーが好きだというのもあるんですが、異種交流ものって、人間同士の関係をデフォルメして描いていると思うので、そういうところが魅力ですよね。さらにそれが思春期の人間の少年と吸血鬼の女性ということで、恋愛そのものの得体の知れなさも絡んでくる。そういった様々な角度から誰かを好きになる気持ちは何なんだろう、という、本質的な部分を見つめられるところが好きですね。

――松永さんはいかがですか。

 完全に以下同文です!(一同笑)

Creepy Nuts 
日本三連覇のラッパー「R-指定」と世界一の DJ「DJ 松永」によるHIP HOP ユニット。2017年Sony Musicよりメジャーデビュー。2020年にリリースされた「かつて天才だった俺たちへ」が話題に。2021年アルバム「Case」をリリース。収録曲「のびしろ」がTikTokで3億回再生を越えるなど、その他SNSでも注目を集めている。 9月にアルバムを引っ提げた全国ツアーは横浜アリーナを含む公演全てが完売。2022年4月からニッポン放送「Creepy Nuts のオールナイトニッポン」、そしてNHK Eテレ「沼にハマってきいてみた」にDJ松永がレギュラー出演。CMやドラマなど多方面で活躍を見せる。
9月7日にニューアルバム「アンサンブル・プレイ」のリリースが決定。そのアルバムを引っ提げた全国ツアーも開催。ツアーファイナルは12月8日にさいたまスーパーアリーナで行われる。

New Single「堕天」2022年9月7日発売 期間生産限定盤/2200円(税込)

コトヤマ先生書き下ろしジャケット/三方背スリーブケース仕様+ピクチャーレーベル
Blu-ray Discには、アニメ「よふかしのうた」のノンクレジットOP/EDムービー、『ロスタイム』×TV アニメ「よふかしのうた」スペシャルミュージックビデオが収録される。

>>>Creepy Nutsの楽曲が見事にハマるアニメ『よふかしのうた』場面カットを見る(写真10点)

(C)2022コトヤマ・小学館/「よふかしのうた」製作委員会

アニメージュプラス編集部

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