作曲家・渡辺宙明氏の逝去を悼み、生前に渡辺氏と数々の仕事で交流があったフリーランス・ディレクターの高島幹雄氏に、その偉大な業績を振り返っていただいた。また、渡辺氏と縁のあるアーティストの方々の追悼コメントも併せて掲載する。(編集部)
昭和、平成、そして令和に渡って、数多くの特撮・アニメ作品の主題歌や挿入歌、劇中BGMの名曲を数多く生み出した作曲家・渡辺宙明(わたなべ・ちゅうめい、本名=みちあき)さんが、6月23日に老衰による心不全のため東京都渋谷区の病院で亡くなった。96歳。1925 年8月19日生まれ。愛知県名古屋市出身。 東京大学心理学科卒業。
渡辺宙明さんが作曲家を志したきっかけは、少年時代に接したハーモニカだった。70年代のアニメ『マジンガーZ』や特撮『イナズマン』の挿入歌などのハーモニカの使い方にその片鱗を感じる。
1956年の映画音楽デビュー以降、数多くの映画音楽を手掛けた後、特に1972年放映開始の特撮TV映画『人造人間キカイダー』、TVアニメーション『マジンガーZ』以降は、ホーンセクションとリズムを軸にしたサウンドで、数多くのヒーローに音楽で彩りを添えてきた。2021 年はスーパー戦隊シリーズ『機界戦隊ゼンカイジャー』の音楽を担当。90歳代の現役作曲家……生涯現役だった。
筆者はレコード会社勤務時代に、渡辺宙明さんと全てミュージシャンが演奏するレコーディングの仕事(関智一原案・主演・歌『銀河ロイド コスモX』)の時だったか、ファンから言われる宙明節と宙明サウンドについて伺うと、こう語られた。
「私の音楽はメロディーだけじゃないんです。編曲を自分でやる音楽は、宙明節というよりも宙明サウンドなんです」
筆者が知る限り、作曲のみならず、自らの手で編曲もしたいタイプの作曲家。90歳の時に卒寿記念で企画・制作させて頂いた3種類のCD BOXや、2018年発売『マジンガーZ/INFINITY』の特装盤なる7枚組CD BOXの制作時などにおける渡辺宙明さんとの思い出が去来する。
記事の最後には、渡辺宙明さんが主題歌、挿入歌あるいは劇中BGMを手がけた数多くの作品から、主な特撮・アニメ作品のタイトルをピックアップして掲載させて頂いた。あなたの思い出の歌や今も好きな歌がきっとあるはずだ。
高島幹雄