• 『ククルス・ドアンの島』古谷徹と安彦良和が取り戻した「15歳のアムロ」
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2022.06.25

『ククルス・ドアンの島』古谷徹と安彦良和が取り戻した「15歳のアムロ」

(C)創通・サンライズ


――本作のアムロに関して、特に注目してほしいポイントを教えてください。

古谷 島の地下基地で、アムロが生身の兵士をガンダムで踏み潰してしまうシーンですね。最初「アムロがこんなことをやっていいのかな?」と本当に戸惑いました。でも、アムロと島の子供たちの交流がそれまで丁寧に描かれていることで、「本当の家族のように思える子供たちを守りたい」という気持ちが強かったことが理解できたんです。

アムロ自身すごく辛い思いをしていることも表情に出ていましたし、そこをきちんと描写することで戦争の悲惨さも伝わってくる。そういう納得はできたんですが、アフレコ時はその戸惑いや迷いが出てしまって、1発OKとはいきませんでした。

安彦 今回は、「アムロってこういう子だよ」というのを再提示する気分があったんですね。テレビシリーズでは、お話の流れの中で結構生意気になってきちゃっているし、ランバ・ラルとの出会いなんかで背伸びさせるような場面やシチュエーショもあって、それは意図的に描いたつもりでいたんだけど、人物像ってそんなに単純なものではないからね。

例えばサイド6でシャアと出会うシーン(第34話「宿命の出会い」)なんかは、ソワソワしてつま先立ちしているようなところもあって可愛いんですよ。今回は、そういう年相応の部分を見せられればいいなと思ったんです。

――他にアムロの印象的なシーンやセリフはありますか?

古谷 畑を耕すシーンですかね。「下の土は黒いんですね」とアムロが言うと、ドアンが「自然の力は偉大だ」と返しますが、あのシーンはちょっと象徴的に思えて印象に残っていますね。

それから、ガンダムを探しに行く時にジオン軍の帽子と水筒を渡されますよね。それを素直に、でもちょっとためらいながら受け取る辺りは良いシーンです。あそこでドアンとの間にある壁をひとつ越えたのかなと思えたんですよ。組織対組織だとわかり合えないけど、個人対個人ならわかり合える。そういうテーマがあの場面に込められていたのかなと。

安彦 こちらの意図がちゃんと伝わっていて良かった。OVA『THE ORIGIN』の時は「自分の漫画のとおりにやればいい」という傲慢なところがあったけど、今回は原作があるとはいえ、それも見ないようにして作っているから「これはもう完全な新作なんだ」という感覚で取り組んでいたし、あそこはまさにそういう気持ちを込めていたから。『ガンダム』の物語はどうしても観念的な方向に行きがちだけど、そこから外れたアムロやドアン、子供たちの日常芝居を描くのは、一見地味かもしれないけれど実に楽しかったですよ。

――では、最後にファンにメッセージをお願いします。

古谷 40年ぶりに大きなスクリーンへ15歳のアムロが帰ってきました。とても感動できる素敵なお話になったので、ぜひ何度でも劇場に足を運んでいただきたいなと思っています。

安彦 元々『機動戦士ガンダム』は、こういう日常性を大事にした話なんですよね。その中に良いエピソードがいくつもあるんだけど、今回の『ククルス・ドアンの島』もそこに加えることができたかな、という感じがします。劇場で、そういう部分を楽しんでもらえると嬉しいです。

撮影/真下裕

>>>アムロ、そして彼が操縦するRX-78-02ガンダムの『ククルス・ドアンの島』活躍場面を見る(写真13点)

(C)創通・サンライズ

アニメージュプラス編集部

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