• ウルトラマンの答えに感じた人間の卑しさと愛おしさ 『シン・ウルトラマン』斎藤工インタビュー
  • ウルトラマンの答えに感じた人間の卑しさと愛おしさ 『シン・ウルトラマン』斎藤工インタビュー
2022.07.02

ウルトラマンの答えに感じた人間の卑しさと愛おしさ 『シン・ウルトラマン』斎藤工インタビュー

斎藤工さん 撮影:高橋定敬



◆神永とウルトラマンの狭間で◆

――神永新二は序盤で大きな出来事に遭遇し、“ウルトラマンになる男” となりました。神永という人物について、台本を読んだときに抱いた印象はいかがでしたか?

斎藤 ある種の事故によってウルトラマンが一体化するという意味では、『ウルトラマン』第1話と非常に近しい印象を受けました。また、神永が “ウルトラマンになる男” となり、デスクが異様な様相になっても周囲が疑問を抱かなかったことから、彼はもともと非人間的な人物だったのではないかと感じて。撮影現場に臨むうえでも、“ウルトラマンになる男” の前後で棲み分けをしすぎないようにしていました。

――確かに “ウルトラマンになる男” 以前の神永の描写でも、独自の視点で透明禍威獣ネロンガの特性を分析していた場面が印象的でした。神永はバディを組んだ浅見弘子をはじめとする禍特対の面々との関係の中で、その心情が徐々に変化していきます。

斎藤 僕はこの物語は、神永の細胞に残っている記憶といった、知的生命体としての核を少しずつ取り戻していくお話でもあると解釈していて。ウルトラマンの意識が神永の中に入ったことで、彼のこれまでの経験がリセットされたわけではなく、どこかで接続していると想像しながら演じました。

――今作の終盤、人間について考え続けたウルトラマンは、最終的にある結論を出します。斎藤さんはウルトラマンが出した答えに、どのような印象を抱きましたか?

斎藤 いかにも、人間と外星人の狭間に立っていた者の結論だと思いました。人間は数式や文法で収まらない不確定さを内包していて、それは個人的にも実感があります。ウルトラマンが出した答えには、人間という生命体の卑しさと愛おしさを感じました。日本だけでなく世界で分断や分裂、孤立が加速している今の世の中では、ウルトラマンが持つ狭間の心は現代に必要な概念の象徴なのではないかと。

――現実の世界ともつながる側面があるというわけですね。

斎藤 もちろん娯楽大作という楽しみ方ができる作品であってほしいと思うのですが、同時に今作は観た方と地続きの何かに接続する物語でもあると解釈しています。今作は庵野さん、樋口さんだけでなく、スタッフの皆さんが幼少期にウルトラマンシリーズから受け取り、それぞれ育ててきた想像の種を込めてくださったと感じていて。それを今の子供たち、かつて子供だった全ての人に作品を通じて渡してくださったように思いました。


【プロフィール】
斎藤 工(さいとう・たくみ)
1981年8月22日生まれ。東京都出身。ブルーベアハウス所属。俳優としてだけでなく、映画監督としても活躍。

撮影:高橋定敬

(C)2022「シン・ウルトラマン」製作委員会 (C)円谷プロ

アニメージュプラス編集部

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