――今回加えられた新しい要素のひとつがサザンクロス隊です。彼らはMS戦の魅力を際立たせると共に、ドアンの過去を垣間見せる存在として重要な立ち位置にあると思いますが、そちらの印象はいかがですか。武内 本作のオリジナルキャラになるんですけれど、彼らが出てくることでドアンのバックボーンが描かれることになりますし、短い尺の中ですがメンバー内の個性も強烈で、しかもそれぞれが凄腕のパイロットなので、結構インパクトのあるキャラクターになっていますよね。ホワイトベースのメンバーに対する形で、ジオン公国軍のイメージを強くアピールする存在だと思います。
――彼らがドアンを語ることで、ジオン公国軍の中でドアンがどういう立ち位置にあったかを仄かに感じさせるところも良いですね。武内 そうそう、あと彼らが出ることで前作以上にジオン公国軍の描写も増えているところも重要で。連邦とジオン双方の描写が均等に描かれることで、観終えた時には双方どちらかの立場というよりも、その中間の視点で観客が作品に関われるような感じになっていると思います。
――ドアンを演じるに当たって、武内さん御自身の中で何かポイントにされたことなどはありましたでしょうか。武内 安彦監督や古谷さんたちが作り上げたガンダムの世界へ自分が参加する、というところから、当時の「演技感」を意識しました。40年前と現在では声優の演じ方、表現の仕方も変わってきているんですね。なので、当時のアニメで演じられてきた大人の演技のテンポ感や滑舌、声質などの技術を念頭に置いて演じたところがあります。
――安彦監督の印象はいかがでしたか。武内 監督はすごく落ち着いていて優しくて、静かなエネルギーを感じさせる方でした。すごい仕事をサラーッとこなされる辺りも、大人としてカッコいいですねェ。こちらの提案に関しても同じ目線で考えて頂けるなど、まさにドアンのような人格者だと思います。
――新しいファーストガンダムの世界にどんな魅力を感じましたか?武内 設定がさらに見直されているためでしょうか、前作以上に各キャラクター像が明快に確立されている印象があるので、そこは楽しめるんじゃないでしょうか。
こういうタイプの作品は「昔の方が良かったな」って言われがちなんですけれど、押さえるべきところをしっかり押さえつつ、モビルスーツなど肝になる部分をしっかりアップデートした『ククルス・ドアンの島』に関してはきっと「さらに良くなっている!」と思っていただけるんじゃないでしょうか。
――最後に、武内さんの考える本作の見どころはどういうところになるでしょうか。武内 今回の作品では、自立性について語っていると思うんです。現在だとSNSなどで自分の意見をぶつけ合うなんてことも多いと思うんですけれど、そういうものも含めて無益な争いが増えていると思うんですね。戦うのではなくて対話することで人間同士は成長できるんだよ、ということを教えてくれる40年前の作品を現代の手法でより伝わりやすくなっているところがとても魅力的です。
ガンダムが好きな人は勿論のこと、物語が独立しているので知らない人でも楽しんで頂けると思いますので、幅広い層の方たちに劇場に足を運んで頂きたいと思います。
武内駿輔(たけうち・しゅんすけ)9月12日生まれ、東京都出身。主な出演作は『遊☆戯☆王VRAINS』(17)『イナズマイレブン アレスの天秤/オリオンの刻印』(18)『A3!』(20)、『アオアシ』(22)、また『アナと雪の女王』シリーズでオラフ役の吹き替えを担当。ほかナレーションや音楽活動など、活躍の場を広げている。
ヘアメイク/小園ゆかり
撮影/真下 裕
>>>ククルス・ドアンの場面カット、武内駿輔さんの撮り下ろしカットを見る(写真15点)(C)創通・サンライズ