• 『パトレイバー2』にまつわる2冊の必読書と巨匠たちの幻のコラボ
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2022.05.08

『パトレイバー2』にまつわる2冊の必読書と巨匠たちの幻のコラボ

(C)1993 HEADGEAR/BANDAI VISUAL/TOHOKUSHINSHA/Production I.G

BS12トゥエルビ『日曜アニメ劇場』で現在、3週にわたって劇場版『機動警察パトレイバー』3作が連続放映中で、話題となっている。
5月1日には第1作『機動警察パトレイバーthe Movie』が放送されたが、5月8日には第2作『機動警察パトレイバー2 the Movie』(以下『パトレイバー2』)、5月15日には第3作『WXIII機動警察パトレイバー』が放送となる。

5月8日に放送される『パトレイバー2』は、押井守監督の1993年劇場公開作品。
戒厳令が敷かれた東京を舞台としたスリリングなポリティカルフィクションで、〈戦時下の東京〉をシミュレートしたクールなストーリーと、再結集した特車2課の面々が挑む決戦の熱さが見どころとなっている。
そして本作は当時「リアルアニメの最高峰」と呼ばれ、その緻密な画面構成や描き込まれた背景、キャラクターの繊細な演技が後のアニメーションに大きな影響を与えている。
そんな『パトレイバー2』の影響力を語る上で欠かすことができないのが、映画公開の翌年、1994年に発売された『Methods 押井守「パトレイバー2」演出ノート』という本だ。

★押井守が語った演出の秘密★

この本は、『パトレイバー2』制作で使用された “レイアウト” を多数掲載し、そのひとつひとつに押井監督自身が詳細な解説コメントを加えているという内容。
“レイアウト” とはアニメの制作において、通常は絵コンテと原画のあいだに存在する工程のことで、ラフな絵で描かれた絵コンテの指示をより具体的に提示し、原画以降の作業の指針となる絵のことを指す。
いわば、各場面の「設計図」のようなもので、たとえば宮崎駿は『太陽の王子 ホルスの大冒険』や『パンダコパンダ』などの作品で「画面設計」「画面構成」といった肩書きで、このレイアウトを担当している。
実写映像とは異なりアニメの画面は “絵” によって成り立っているので、そこに何がどのように描かれるのか(あるいは描かれないのか)ということにはすべて、作り手(特に演出)の「意図」が込められている。
それゆえにレイアウトは、アニメの映像にとって重要な工程なのだ。
ある場面でなぜ、この構図が選ばれ、キャラクターがこの角度、大きさで描かれているのか。
背景に何が、どんな大きさで描かれているのか。
どこから画面に光が当たり、どのように影が付けられているのか。
この『Methods』という本では、レイアウトに込められた演出意図が、押井監督自身の言葉によって説明されている。
それゆえ本書は同時代の、さらには後に続く映像作家/演出家たちにひとつの「お手本」「教科書」として受け入れられることになったのだ。

そしてもちろん、この本の内容は作り手だけでなく、観客にとっても大きな意味を持っている。
『パトレイバー2』の緻密な映像は、ただいたずらに“リアル”を目指しただけの「アニメ化された実写」ではない。
映し出されるものすべてに意味や意図が込められており、そこには確実に“何か”を観客に伝えようという意志がある。
それを示してくれるだけでなく、その意味や意図さえも言語化して伝えてくれるのが『Methods』なのだ。
今回の放送であらためて『パトレイバー2』の世界に魅了された人はぜひ、この本も手に取ってみてほしい。
スリリングなポリティカルフィクションの奥に染み込んでいるメッセージや、観客の胸を刺すエモーショナルな演出を、より深く感じることができるはずだ。
▲『Methods 押井守「パトレイバー2」演出ノート』KADOKAWA/復刊ドットコムより発売中
▲『パトレイバー2』本編カットより。どんなにさりげないカットも、すべて緻密に計算されたレイアウトが存在する

(C)1993 HEADGEAR/BANDAI VISUAL/TOHOKUSHINSHA/Production I.G

アニメージュプラス編集部

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