「アニメを作るって、絵を描くこと以外に何をしているんだろう?」
アニメ業界へ足を踏み入れる前の私の素朴な疑問だ。アニメが大好き、でもその裏側がどうなっているのか知らない……こういう人は多いのではないだろうか。
私はアニメ制作会社に制作進行として入社し、TVシリーズやOVA、劇場作品やVOD公開作品などに携わってきた。今はアニメ制作会社を離れ、編集としてアニメ作品を紹介している。
そんな私が、実際に制作としてアニメの現場に入って知ったのは、監督、脚本、演出、作画監督、仕上げ、撮影、3D、美術、編集、音響……数えきれないほど多くのスタッフが画面の向こう側にいて、日々闘っているということだ。
映画『ハケンアニメ!』は、アニメ業界で闘う者たちを “リアルに” 描いた、熱血エンタテインメントだ。では私がどこに “リアリティ” を感じたのか、紹介していきたいと思う。
●アニメスタジオの風景のリアルさアニメーターが使用する作画机に溢れかえるのは、「どこに何があるのか分かるのか?」と思ってしまうほどの大量の原画用紙に、絵コンテや設定の紙、紙、紙……。そして、監督の机の後ろに倒れてしまいそうなほど積み上がった大量のカット袋の山……。このアニメスタジオ特有の、物でごった返している様子が映画の中でリアルに再現されている。
いまだに紙作業が主流であるアニメスタジオの雰囲気をしっかり残しつつ、絵コンテ作業や作画作業において、近年一気に加速したタブレット化の様子も描いていた本作は、かなり “今、この時代の” アニメ業界の風景に近いと感じたのだ。
●クセが強すぎるクリエイターたち本作に登場するアニメ制作現場のスタッフはみんな個性豊かだ。作中では、擬音語と大ぶりなジェスチャーを使って雰囲気を教えてほしいという作画監督に、きっちりと数字を使った指示出しを望む撮影監督など、色々なタイプのスタッフが出てくるのだが、これは決して映画の中だけの話ではない。
クリエイターと一括りに言っても、上がりにそのときの気分や今ハマっている作品がかなり反映される感覚派、どう描いたらどう見えるのか計算しながら作業する理論派など、実に様々なタイプのクリエイターがいる。
そんな現実にもいるような、個性的で職人気質で才能あふれるクリエイターたちを初監督の斎藤瞳(演:吉岡里帆)がまとめ上げられるかどうかも本作の見どころとなっている。
>>>リアルすぎる制作現場……! 映画『ハケンアニメ!』スタジオの様子が分かるカット(写真20点)(C)2022 映画「ハケンアニメ!」製作委員会