――「ファントムブラッド」のときは、ジョナサンとディオの対決シーンのイメージボードを何種類か作られていました。今回もそういったものが存在するのでしょうか?水﨑 はい、「ストーンオーシャン」もやっぱりイメージボードを先行して描いています。護送車の中とか、キャッチボールしているところとか、「ストーンオーシャン」というと思い浮かぶシーンをポイントポイントでピックアップして、ボード化しています。
――(イメージボードを見ながら)今回のタッチは、ウルトラジャンプのCMに近い感じですね。水﨑 そうなんです。今回のイメージボードを描いてくれたいっささんは、ウルトラジャンプのCMのときから参加してもらっていて、荒木先生ふうのタッチをしっかりと描ける方なんです。
――いっささんというのは、どんな方ですか?水﨑 もともと広告系のマンガを描かれていた方で、神風動画のメイキングセミナーに来ていただいたのがきっかけで知り合いました。『ジョジョ』のOPを見て感動したとおっしゃっていたので、ウルジャンのCMに参加していただいたところ、すばらしい仕事をしてくださって。そこから、もう絶対的な信頼を置いています。今回、「ストーンオーシャン」のOPを作るにあたり、要になるビジュアルを一緒に考えてもらいたくて、真っ先にいっささんにお声がけしました。イメージボードは、僕からリクエストした場面にご自身のチョイスやアレンジも交えて、いっささんが描いてくれたものです。
――今回、かなり中心的な役割を果たしているんですね。水﨑 OP本編の制作においても、作画監督みたいな役割も担ってもらっています。刑務所内の通路に出てくるモブキャラたちは、ほとんどいっささんの修正が元絵になっていて、それをもとにアニメーターのスタッフに原画を起こしてもらったんです。あとは、キャラクターのポーズを修正してもらったりとか。
――修正を拝見すると、かなり細かい指示が書き込まれていますね。水﨑 いっささんは、一枚の絵にドラマを持ち込もうとするんです。例えば、サビのところで、徐倫が承太郎に背を向けて歩き出す場面では、修正指示に「風のなびく方向が違う」ことが書かれています。物語の初期段階では、二人の向いている方向や背負っているものが違うことを表現しようとしているんです。そして、歩き出した徐倫については「もう決して立ち止まらない」と、その決意を表情で表そうとしている。このあたりの徐倫の内面――父親に反発する気持ちや心理的な葛藤など――は、男性目線だとちょっとわからない心の襞なので、いっささんが噛み砕いて明文化してくれて、とてもありがたかったですね。『ジョジョ』ファンの僕にとっても、「ストーンオーシャン」の新しい魅力に触れたような感動がありました。
――初の女性主人公の「ストーンオーシャン」には、まさに適任だったと。水﨑 そうですね。芝居をつける上でちゃんと流れも踏まえてくださって。徐倫とストーン・フリーがポーズを決める場面でも、いっささんのメモには「『スターダストクルセイダース』前期OPの承太郎が立ち上がる流れと動きがリンクする」と書いてあります。そうした具体的な指示を、宇都宮くんがちゃんと拾って現場に伝えてくれたことで、ファンの方の心に届くエモーショナルな映像になったと思っています。
――神風動画の『ジョジョ』OPにとって、いっささんは重要なラストピースだったんですね。水﨑 うちのスタッフが芝居をつける上での基準を作ってくれました。今回は特にカメラがグリグリ動き回るので、『ジョジョ』の世界観を崩さないためにも、基準になるキャラクターの絵はしっかり押さえておかなければいけません。スタッフごとに『ジョジョ』に対する思い入れや知識の量も違うから、それを整える意味でも、いっささんの貢献は大きかったです。信頼を超えて、僕はもう尊敬しています。
(C)LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社・ジョジョの奇妙な冒険
SO製作委員会