――それは、どのような?山口 まず「テレビシリーズの演出をやらせてください」と自分から手を挙げて、そこからテレビスペシャル、さらに映画の演出も手伝ってという形で、周りに「自分はこのスケジュールでこれぐらいのことができますよ」というアピールをしたんです。「五カ年計画」と言いながら実際に何年かかったかは定かではないんですけれど(笑)、そういった仕事を続けていたある日、「劇場版、やってみますか」という言葉をいただけました。
――今回『のび太の宇宙小戦争』のリメイクを選んだのは、監督の意向ですか?山口 はい、スケジュール的にオリジナルは難しいだろうということになって「じゃあ原作は何がいいですか?」と言われて、自分はすぐに『のび太の宇宙小戦争』を希望しました。
実は『のび太の海底鬼岩城』も勧められたんですが……これ、ネタバレになりますけれど、最後にバギーちゃんが死んじゃうじゃないですか。人間ではないとはいえメインキャラが死ぬことを感動につなげるのは、自分としてはちょっと抵抗がありました。
あとは、水の中での表現がものすごく大変なんですよ。止まっていても髪や服はなびかないといけないし、立ち方にも影響するでしょうから。いくら「テキオー灯」を浴びているとはいえ、空気中と同じように描くのはさすがにダメだろうな、と思いました。その点、宇宙はまだ楽なんですよ(笑)。
――(笑)、確かに水中描写は骨が折れそうです。山口 世代的にも松本零士ブームを通過していて――自分は『宇宙戦艦ヤマト』より『銀河鉄道999』派なんですけれど、あの時代のSFならではのビームが飛び交うバトルもののような、慣れ親しんだ世界観だからこそやりたい気持ちも大きかったですね。
――今回脚本を担当された佐藤大さんは『カウボーイビバップ』などのSF作品で知られていますが、そうした方向性からのオファーだったのでしょうか。山口 佐藤さんはシンエイ動画さんからの紹介でした。佐藤さんは硬軟ジャンルを問わずたくさんの作品を手がけていますが、打ち合わせで話を進めていくうちに反りが合うと言いますか、実にやりやすく進めることができました。
ドラマの中で友情を描こうと考えたら、昔の『ど根性ガエル』の歌じゃないですけれど "泣いて笑ってケンカして" ――つまり、意見のぶつかりあいも見せなきゃいけないと思うんです。中盤でパピくんを助けるために宇宙に飛び立つかどうかでゴネるスネ夫とのび太たちがやりあうシチュエーションがあって、そこはすごく大事な場面なんですが、シナリオのその前後がいい感じに仕上がっていて、「佐藤さんにお任せしてよかったなぁ」と思いましたね。
>>>新しい魅力が加わった『のび太の宇宙小戦争 2021』場面カットを見る(写真12点)(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2021