• 『大怪獣のあとしまつ』監督がこだわった「死んだ怪獣」のリアリティ
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2022.01.25

『大怪獣のあとしまつ』監督がこだわった「死んだ怪獣」のリアリティ

(C)2022「大怪獣のあとしまつ」製作委員会

異色の空想エンターテインメントが誕生した。これまでにないアプローチで怪獣とそれを取り巻く人々を描いた映画『大怪獣のあとしまつ』だ。
ある日突如現れ、光エネルギーによって絶命した巨大怪獣。その死体の “あとしまつ” は誰がやるのか。責任を巡って右往左往する政府。そして、死体処理の極秘ミッションを負わされた主人公・アラタは、この難局にどう立ち向かうのか……。
アラタ役を山田涼介、アラタの元恋人ユキノ役を土屋太鳳、さらに濱田岳、オダギリジョー、西田敏行ほか豪華キャストが集結した怪獣映画は、いかにして生み出されたのか。映画『インスタント沼』『俺俺』やテレビドラマ『時効警察』シリーズを手がけ、本作でもその異能ぶりを存分に発揮する三木聡監督に話を伺った。

――本作の着想のきっかけを教えてください。

三木 僕は30年くらい前にバラエティ番組の作家をやっていた時代があって、その中で「映画の失われた時」っていうコーナーをやっていたんです。映画の中では実は映像化されていない間抜けなシーンを取り上げていく企画で、例えば『007』で海から島に潜入して潜水服を脱いでタキシード姿になる、というシーンがありますけど、「ならばタキシードを着ているシーンもあるはずだ?」みたいな、映像化されていない時間に面白い出来事があるんじゃないかと。

それで2006年ぐらいに映画の取材を受けていて「次回作は何にします?」と聞かれた時に「ガメラの死体を片付ける話」って答えていたんです。僕が怪獣映画撮るなら、怪獣の死体を片付ける作品をやりたいとずっと思っていました。
そのプロットは作っていたんですけど、東映と打ち合わせをしている時に「ある若者がショッカー(の戦闘員)になる話」をやりたいと言ったら、「いやぁ、ちょっとそれは……」という結論になり、「他にないんですか?」と訊かれたので怪獣の死体を片付ける話をしたら、「それ、いいじゃないですか。脚本にしてくれませんか」という流れになりました。
ショッカーの話も、あとで考えると『ジョーカー』が当たったんだからいいじゃないか、と思ったりもしましたけど(笑)。それが2013年か14年のことです。

――監督の世代ですと、発想の根幹にウルトラシリーズなどがベースにあるのかなと思います。

三木 そうですね。僕もそうだし、造形をやってくれた若狭(新一)さんが1960年生まれかな、特撮監督の佛田(洋)さんも61年生まれなのでウルトラマンの直撃を受けた世代なんです。で、ゴジラのシリーズもあって怪獣大ブームですよね。ガメラを観たら、みんなミドリガメを飼ったり……。

その後も1970年代から80年代にかけてのアメリカ・ハリウッドの作品とか、もうちょっと前で言えば、『2001年宇宙の旅』の特撮合成とかを青年期によく観て、影響を受けたりしました。テレビの仕事でも特撮技術を紹介する番組を担当して、(怪獣造形の)若狭(新一)さんと初めてお会いしたのもその頃です。

――怪獣のビジュアルはティラノサウルス(型恐竜)のような感じに見えました。若い頃好きだった怪獣をオマージュした部分はありますか。

三木 今回はゴジラと似ていないことが命題としてありましたね。基本的には、二足歩行のティラノサウルスとかがベースになっています。
今、恐竜って研究では鳥類に近いといわれているじゃないですか。だから、怪獣がひっくり返って脚だけ空に突き出した時に鳥の脚のように上を向くかどうか、若狭さんと確認を取り合いました。

――今回の怪獣は足を高く上げた状態で全高が155メートル、最全長(体長)が380メートルと、邦画史上最大級クラスです。このサイズにした理由を教えてください。

三木 ずるい言い方ですけど、死んでいるから動かなくていいじゃないですか。なら多少大きくなっても、VFXの合成上の不具合はないからいいだろう、と。でも途中から、上からヘリで東京スカイツリーを望遠レンズで撮った時のような映像の力感みたいなものを意識し出して、脚を100メートル以上にするなら牛久大仏ぐらいの高さがないといけない、ということになり、実際みんなで観に行きましたよ。だから、脚のサイズからの必然、というわけです。

また、怪獣が死んでいる川の大きさに合わせて、サイズを細かく決め込んでいきました。実際の川に(ダミーの)ボートを置いたり高さの参考用のドローンを上げて、「脚はここまで、怪獣の長さはここまで」と、現場で当て込みながらVFXの野口(光一)さんと画作りを決めていきました。

(C)2022「大怪獣のあとしまつ」製作委員会

アニメージュプラス編集部

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