──豊口さんの中で、レヴィを「掴めた」と実感できたのはいつ頃だったんですか?豊口 たぶん5話ですね。沈没した潜水艦の中にロックと二人で潜入する話。そこでロックに自分の事を訥々と語るんですけど、あの話くらいからかなぁ。「モノにできた」というのは何ですけど、近づけてきたかな? って感じたように覚えてます。
──それぞれ演じる上で意識していたことはありますか。例えば、レヴィは荒っぽい口調ですけれど。豊口 そうなんですよ、その「荒っぽい流暢さ」が最初はなかなか難しくて。そこは1期1話の時に結構注意を受けた気がします。
それからレヴィは「ハッピー♪」っていう気分では演じられない役で(笑)。当時の私が感じていたプレッシャーや大変さは、思えば演じる上ではプラスだったんじゃないかな。
──ロックは、普段は優しさやモラルをあの世界で生きる上での矜持としているところがありますね。浪川 あの世界でモラルを持って生きているロックは、僕から見ても「なりたい男」です。でも後半は全然持ってないですけど(笑)。
豊口 本当ですよ! 怖いよ、もう(笑)!
──3期での浪川さん曰くの「悪ロック」(冷酷な雰囲気のロック)って、結構豹変するような印象があるんですけれど。浪川 そこは3期のOVAシリーズからです。やっぱり基本は「ヤバいよ、まずいよ、やめようよ」なんですが、周りのみんなに支えられて生きていく中で残酷で辛い思いをしながら追い込まれて、どうしても変わらなきゃいけないという開き直りの時がついに来た、というか。
──当時は、悪ロックへの変化というのは浪川さんとしてはグラデーションを着けて変わっていく感じで演じてたんですか?浪川 いや、結構「よいしょっ!」って感じで切り替えた気がします。2期と少し間が開いてからかもしれないですけど。
豊口 4年くらいですかね?
浪川 でしたよね。だから、アフレコ現場で「ここでこんなに突然変わるんですか?」って言った覚えがあります。でも、そこはロック自身背伸びしている感じがあって、自分の中ではそんなに違和感はなかったです。
──お二人から見て、ロックやレヴィの生き様はどう感じられますか?浪川 ロックほど人に決められた生き様ってあります(一同笑)? 偶然関わった他人に、あそこまで人生を変えられたわけですよ。1期1話の船の上から人生リスタート。
豊口 確かに、なかなか無いよね。
浪川 それで日本に帰ってきたと思ったら、バラライカさんの「ビジネス」のお供で、怖い人たちが常に周りにいっぱいいるし。だからもう、生き様は「皆さん次第」ですよ。
豊口 (笑)。レヴィは彼女なりに生きる上で貫いているものはあると思うんですよ。だから真逆なところのあるロックの言動にカチンときて掴みかかってみたり。でも同時に迷いも絶対にあって……レヴィ自身が正解と信じていた部分が、ロックと出会ったことで揺らいだというか。
浪川 なるほど。
豊口 ずっと「自分はこうだ」と思って生きてこようとして、実際にそうして生きてきた……生き抜くのにギリギリの世界でモラルは役に立たないですから。でも普通のヤツが入って来ちゃったから、ちょっと子供の頃の感情を思い出しちゃった、みたいな。そういうことから、ロックと衝突したんだと思うんですよ。ほら、『BLACK LAGOON』の世界は一般の感覚の人は生きていけないから。
浪川 そうですよね。
豊口 ただ、私自身としてはまた揺さぶられたいっていう感覚はあります。そうなった時にレヴィはどうなるのか? っていうのは、見てみたいですね。
浪川 じゃあ、もう一人くらい日本のサラリーマンを……。
豊口 (レヴィの口調で)揺さぶってくるのは、お前(ロック)じゃねーのかよ? ああ、お前はこっちの世界にすっかり染まっちゃったもんなぁ(笑)!
浪川 そうそう、ロックは染まっちゃってるから(笑)。
>>>浪川大輔さん&豊口めぐみさんの収録風景を見る(写真3点)(C)2006,2010 広江礼威/小学館・BLACK LAGOON製作委員会