• 2022年注目の新作アニメはこれだ!【藤津亮太スペシャル対談】
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2022.01.01

2022年注目の新作アニメはこれだ!【藤津亮太スペシャル対談】

劇場アニメーション『犬王』 2022年初夏、全国ロードショー (C) “INU-OH” Film Partners


編集長 では、最後に藤津さんの2021年のお仕事も振り返りましょうか。

藤津 ありがとうございます、まず今年は2年ぶりに2冊本を出すことができました。

1つは様々なアニメ作品で描かれてきた戦争の系譜を追いながら、作り手はそれをどのように描き、観客はどのように受け止めたのかを論考した『アニメと戦争』。『宇宙戦艦ヤマト』や『機動戦士ガンダム』がブームの頃に「好戦的じゃないか」という声が上がる中、自分の中には「そうじゃない」という思いと、主人公の勝利がヒロイズムの一種であることを否定できない思いが混じり合っていたわけです。その迷いと向かい合って、ちゃんと書けたのは良かったです。

もう1冊は雑誌『ユリイカ』に掲載された評論を中心にまとめた『アニメの輪郭』。これは時評とは違って、アニメとはどういうものなのかを「主題」「作家」「手法」という3つの視点で考えた内容です。

編集長 こちらは、ワンテーマでまとめた『アニメと戦争』とは一味違うバラエティに富んだ評論集になっていますね。掲載内容で、ご自身で手応えがあった原稿などありますか。

藤津 手応えがあったのは、ファンタジーがアニメにとって向いているメディアかどうかを論じた『アニメに適さない題材、ファンタジー』と『岡田麿里、アニメーション監督は誰でもできるのか』、あと、僕はあまり音楽は強くないんですが、菅野よう子さんの音楽の使い方について資料を集めて書いた『菅野よう子、最も身近な批評と呼ばれる音楽』は気に入っています。

あと、昨年の4月から静岡のSBSでラジオのレギュラー番組に週一で出演しています。『TOROアニメーション総研』というタイトルで、毎週テーマやお題を決めてリスナーのハガキを募って、それを踏まえてアニメの話をしていく番組です。
メンバーはアニメーションが好きな二十代の男性アナウンサー・原口大輝さんと、地元の声優学校に通ってる19歳の女の子・大村のあさん。僕は解説おじさんみたいな感じで、毎週静岡に通って収録しているんです。リスナーから来るハガキを読むのがすごく楽しくて、大きな刺激になっています。

編集長 そうなんですか、静岡のアニメファンの反応はいかがですか。

藤津 今人気の話題作をチェックしている男性ファンからの投書が多い印象ですね。逆に言えば、そこまでマニアックな内容や渋いタイトルについての投書は来ないんですよ。ならば、こちらとしてはそういう部分をしっかり紹介する立場で臨みたいなと。

編集長 そういったファンの目線が感じることで、藤津さん自身の目線も変わってくるところがあったりするんじゃないでしょうか。

藤津 はい。自分がTwitterのタイムラインやSNSで見かけるアニメファンの発言って、ゴリゴリに濃い内容が多くなりがちなんですけれど、番組のファンは「〇〇話の作画が〇〇さんだ!」みたいな細いことを気にせず、もっと自然な姿勢で楽しんでいる感じがするんですね。

そういうアニメ好きの人の話を聞くことが自分にとって原点に戻る――まではいかなくとも、「アニメを好きになる」ってこういうことだよな、という立ち位置を確認できる場所となっていて、とても新鮮な気持ちを味わえています。

>>>2022年期待の新作アニメのビジュアル・場面カットを見る(写真11点)

藤津亮太(ふじつ・りょうた)
1968年生まれ。アニメ評論家。新聞記者、週刊誌編集部を経てフリーライターに。アニメ・マンガ雑誌を中心に執筆活動を行う。近著は『アニメと戦争』(日本評論社)、『アニメの輪郭 主題・作家・手法をめぐって』(青土社)。

治郎丸慎也(じろまる・しんや)
1968年生まれ。1991年徳間書店に入社、月刊誌・週刊誌の編集部などを経て、2020年よりアニメージュプラス編集長に。

>>>『TOROアニメーション総研』公式Twitter

アニメージュプラス編集部

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