――コロナ禍での収録になりましたが、アフレコはどんな風に行われたのでしょうか?
花江 少数ではありますが、一緒に喋っている人同士で収録もできたので、鈴木君とは結構一緒にアフレコさせてもらいました。後はそこに、ジャビやパウー、チロル達が喋っている順にアフレコブースに入ってくる感じで。
――アフレコ時のディレクションで印象的なものはありましたか。鈴木 細かいディレクションはそんなにありませんでした。ただ、「ここは口調を強くし過ぎないように。もう少し少年っぽい感じで」というディレクションはありましたね。というのも実は僕、オーディションの時からビスコの口調を、原作を読んで受けた印象よりもさらに荒っぽいものに変えたりしていたんです。
――なぜ、より荒っぽい言葉を選んだのでしょうか。鈴木 物語を通してのビスコの性格や戦いぶりを見ていると、自分がビスコとして生きる上で、端々に出てくるビスコの丁寧な言葉に対してちょっとモヤモヤするものを感じたんです。そこで言葉を汚くしてみると、すんなり物語が進み始めたので、少し荒っぽい表現にしてみて……。もちろん丁寧な言葉にも原作の先生の意図があったと思うのですが、有難いことに僕の変更を先生や監督が容認してくださって、この形になりました。
――花江さんはいかがでしたか?花江 ぼくもそんなにはなかったんですが、泣き方のシーンでのディレクションは印象に残っています。ミロは感情が激しく動くシーンが結構多くて、泣くシーンもあったのですが、ミロのビジュアル的に結構ワンワン泣くタイプなのかなと思いきや、「ぐっとこらえて男泣きをしてほしい」というディレクションだったんです。これ以外にも、彼の芯にあるのは熱いものなんだなと感じるディレクションは凄く多かったですね。
――ミロの男らしさは、今後描かれていく旅立ちのシーンでも感じられるところですよね。花江 そうですね。やっぱり「一人の男」だなと演じていても感じました。あと、ディレクションとは関係ないんですがアフレコの思い出として、特殊な用語がたくさん出てくるので、その読み方が難しいというのがありましたね(笑)。
――例えばどんな言葉でしょうか?花江 「忌浜(いみはま)」とかがパッと見、読めなくて。あとはイントネーションも「サビ↓ツキ」なのか「サビ↑ツキ」なのかとかは結構悩みました。結局、「サビ↓ツキ」だったんですが。
――耳慣れない言葉だからこその苦労があったんですね。今作では津田健次郎さんがお二人の前に立ちはだかる黒革知事役として出演されていますが、現場では何かお話されたりしましたか。花江 津田さんはボス役として出てくるんですけど、めちゃくちゃ喋るシーンがあるんです。やっぱり原作の良いところをつまみながらアニメにしているので、どうしても尺が足りない部分がああって。そこを補うために、黒革知事が息継ぎなしでひたすら喋るところが出てくるんですが、もう死にそうになるくらいの文量なので、そこが大変ですねという話はしました(笑)。
鈴木 そうなんですよ。津田さんの魅力は間をたっぷり使って喋っていくところだと思っていたので、そうじゃない津田さんの魅力も知ることができました(笑)。他にも、「ビスコみたいな作品は最近ないから面白いよね」という話から、「最近海外では日本の俳優より声優のほうが有名らしいんだよ」という話をしたりと、休憩の合間に色々お話させていただきました。――パウー役の近藤玲奈さんやチロル役の富田美憂さんらとのやり取りで、何か印象的なものは?花江 近藤さんの脚が細すぎて心配になるね、という話はしましたね(笑)。しかも、あんなにスラっと細いのに、パウーになる時は、低く勇ましい声になるんですよ! そこが凄いねって。
――では、アフレコ現場は結構和気あいあいとした雰囲気だったんですね。鈴木 そうですね。楽しい雰囲気で最後まで収録できました。あと、収録を終えた今、自分の喉が強くて良かったなと思っています(笑)。自分は結構声が出る方だって自負があったんですけど、それでもなかなか魂を削るようなアフレコをしたんですよ。本当に声を出し切ったので、是非アニメを観て確認してほしいです!
花江 いや、もう、本当にみんなで魂削ってアフレコしたんです。物語が動くのは3話以降、僕達の叫びが届くのはもう少し後になるかもしれませんが、是非そこまで一緒に盛り上がっていただけると嬉しいです。宜しくお願いします。
鈴木崚汰(すずき・りょうた)12月22日生まれ。ヴィムス所属。主な出演作は『錆喰いビスコ』(赤星ビスコ)、『海賊王女』(雪丸)、『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』(源誠二)、『機界戦隊ゼンカイジャー』(カッタナー)、『劇場版 ドーラといっしょに大冒険』(ディエゴ)ほか。
花江夏樹(はなえ・なつき)6月26日生まれ。アクロスエンタテインメント所属。主な出演作は『錆喰いビスコ』(猫柳ミロ)『東京喰種トーキョーグール』」(金木研)『四月は君の嘘』(有馬公生)、『鬼滅の刃』(竈門炭治郎)、『ヴァニタスの手記』(ヴァニタス)ほか。
>>>『錆喰いビスコ』場面カットを見る(写真7点)(C)2021 瘤久保慎司/KADOKAWA/錆喰いビスコ製作委員会