──伊藤さんから見ての、祥子様に憧れるところは?伊藤 女性なら、一度はああいう立場になってみたいと思いますよね。一生続けるのは、ちょっと厳しいかもしれないですけど(笑)。一年間くらいだったら、あんな人生を送ってみたいですよね? きっと楽しいだろうなって。
植田 (笑)
伊藤 そういうところかなぁ?
──演じている中で、リリアン女学院というか山百合会のような環境自体にも憧れを感じたりはしましたか?植田 私は元々宝塚に行きたかった人なので、ああいう「女性の園」みたいな世界はメチャメチャ憧れでした。宝塚も、どちらかと言えば先輩方=お姉様の世界なので。だから『マリア様』の出演が決まった時はとにかく嬉しかったです。
──ちょっと、その疑似体験ができたみたいな感じですか?植田 そうです。まさに疑似体験でした。
伊藤 私はずっと共学校で学んできましたので、新たなる世界に飛び込んだような感じでしたね。実際はどうなのかは分からないですけど、女子高ってきっとこういう感じなのかなぁ? って思いながら楽しんでました。
──お二人の高校時代の想い出みたいなものを伺いたいのですが。
伊藤 もう私はちょっと昔過ぎて……ここはパスと言うことで(笑)。
植田 高校ではないんですけど、私の通っていた大学が実はリリアンみたいなお嬢様学校っぽい空気だったんですよ。
それこそリリアンにあるような銀杏並木が校内にあって。それからグラウンドの周りを桜の木が囲んでいるんですけど、そこでみんなで座ってピクニックしたり……そういうのは、アニメでも志麻子さんと由乃さんとでやったなぁ、とか。
今でも私は銀杏並木が大好きで、銀杏を見ると「志麻子さんが銀杏を拾ってそうだなぁ」って思ったり(笑)。
▲『THE PLAYBACK』より、植田佳奈さん。
伊藤 私も思う~(笑)。銀杏と百合根を見ると、志麻子さんを思い出す(笑)。
──植田さんにとっての初の座長(主役)を務めた作品は『マリア様』になるんですか?植田 たぶんそうだったと思います。確か、お姉様の婚約者・柏木優さん役の檜山修之さんから、1期の打ち入りで「主役にとって大事なことって、分かる?」と言われたんです。
伊藤 うんうん。
植田 その時の私は「しっかりお芝居すること」みたいな、今思えばもうありがちなことを答えたんですよ。若かったなぁって思うんですけど(笑)。そうしたら檜山さんは「それは当たり前のことで、主役=座長に一番必要なことは、現場の空気を作ることなんだよ」って。
主役とはいえ新人が現場を引っ張っていくというのが、当時の自分には考えられなくて。実際に現場ではお姉様(伊藤さん)や蓉子様(篠原恵美さん)がすごく引っ張ってくれていたんです。そして聖様(豊口めぐみさん)がムードメーカーになってくれていて。
その上で、「自分はどう空気を作っていったら良いのか?」となった時に、檜山さんから「色々な人の架け橋になれよ。ゲストとかで来た人間がその作品を好きにさせるのが、主役やレギュラーキャストの役目なんだよ」って言って下さったのが、すごく印象に残っていて。
だから私が主役をやらせてもらえる時には、新人さんが現場に初めて来た時に、溶け込みやすくなるように促してあげたり……例えば「アフレコの後みんなで食事に行くけど、一緒にどう?」とか。「若手はあまり知らないわ」みたいなベテランの方がいらした時には、すごく積極的に話しかけるようにもなりました。
誕生日とかのお祝い事があった時には、キャストだけじゃなくてスタッフさんも一緒にワイワイできるような場を作れるように、自分から動いたりとか。そういうことをするようになった切っ掛けの一言でした。
──お姉様である伊藤さんからご覧になって、そういう空気は作れていた感じがしましたか(笑)?植田 ウフフフ。
伊藤 当時ですか? いやぁ、とにかく私は最初から祐巳(植田さん)を贔屓していたから(笑)。
植田 そうなんですよ! なんでも肯定して下さるんです。そこが逆に受け入れてもらっていることなのかな? って思うんですけど。
伊藤 でも、これほどまでに素敵な作品に仕上がって、みんなの仲が良くなったということは、ちゃんと祐巳ちゃん(植田さん)が、そこはしっかり架け橋になれていたからだったと思います(キッパリ)。
植田 いやぁ(照れ)?
(C)今野緒雪/集英社・山百合会