──当時演じる上で意識されていたことは?植田 祐巳はあの世界の中では比較的庶民の家庭……それでも多少は裕福なんだとは思いますけど、そういう家の子なんですよ。ですから、特にお嬢様言葉みたいな口調は意識してなかったです。
祐巳を演じるにあたっては、変な色を付けないこと。役者としてお芝居をしようとすると「上手く聞かせたい」とか「ここはメリハリを付けて演じたい」というような風になりがちなんですけど、祐巳に関しては、真っ直ぐに台本の台詞として書いてあることをそのまま伝えるように、何も考えないでお芝居をするというのを、すごく意識してアフレコしてました。
伊藤 私の方は、完全にお嬢様という感じですから……お家やそれまで育ってきた環境を一生懸命想像して、なるべく外れないように。お話の中にもありますけど、ハンバーガーショップに行ったことがないとか、ジーンズもはいたことがないっていう生活を送っている。それって私達の日常生活からしたら、あり得ないじゃないですか。
植田 ウフフ。
伊藤 そうした浮き世離れした部分が、狙った感じといいますか、わざとらしくなくならないように。それが私(祥子)の日常なんだっていうところを目指して、なるべく普段から下世話なことをしないようにとか、言葉遣いも丁寧にしようとか(笑)。
それと、当時の私は子育て真っ最中で、娘だしこれはちょうど良いと思って「××さん、これをやりましょうね」みたいに接したりとか。そんな風にやっておりましたの(笑)。
植田 「ごきげんよう」って挨拶してくれますもんね!
伊藤 そう! それで、娘が中学受験をすることになった時に、私「ごきげんよう」って挨拶する学校を探して、見つけたんですよ!
植田 あはは!
伊藤 私も夫も「そこだと良いね」って言ってたんですけど、本人は残念ながら「ごきげんよう」という挨拶はしない学校を選びまして……。『マリア様』みたいな世界の人にはなれなかったと(一同笑)。あんなに家では「ごきげんよう」って言ってたのに~って(笑)。
植田 あんなに言い慣れてる子はいないっていう感じでしたよね(笑)。
▲『THE PLAYBACK』より伊藤美紀さん。
──伊藤さんは、相当に生活習慣的な部分にも影響を受けたんですね(笑)?伊藤 そうなんです。私、そういうタイプなんです。その頃やっている役に生活が引っ張られてしまうんです。だから悪役をやっている時は、日々の生活もちょっと暗くなっちゃうの。
植田 へぇ(驚き)! 不良学校のお話じゃなくて、良かったです(笑)。
伊藤 本当ね(笑)!
──植田さんは、当時そういう風に影響を受けたようなことはあったんですか?植田 影響されたといえば、『マリア様』のキャストのみんなとすごくなかよくなれたことですね。お姉様(伊藤さん)や蓉子様(篠原恵美さん)はもちろんなんですけど、同世代の(生天目)仁美とか(伊藤)静とメチャメチャ仲良くなって。
この作品がなかったら、もしかしたらこんなに長くワイワイやれる仲になることもなかったかもしれないなって。彼女たちと急に距離が縮まったのが、『マリア様』だったんです。なので、そこは作品に影響されたなと思いました。
──すると、当時のキャスト陣とはお二人とも今も仲が良いんですね?植田 仲良いですね。
伊藤 私もみんなと会えば、役の名前で呼んじゃいますよね。
>>>『THE PLAYBACK』収録時の伊藤さん、植田さんを見る(写真6点)(C)今野緒雪/集英社・山百合会