平井久司がイラスト寄稿！『ファフナー THE BEYOND』監督が語る裏話

――完結を迎えた今だから言えるこれまでの『ファフナー』シリーズ、また『THE BEYOND』内のトリビアなどがありましたら、お教えください。

能戸　では、思いつくままに……。プクは自分が20年飼っていた猫の名前です。本当にプクプクしていましたね。あと芹ちゃんの虫好きは当時、自分がオオクワガタの飼育にハマっていて増やしていた影響です。

剣司の父親である日本自衛軍海尉・近藤竜司を作中に出せないかと考えていたのですが、結局出せませんでした（笑）。竜宮島のパイロット内で両親を言及していないのは美三香の父親と零央の母親で、そういうお互いの境遇が近いのが零央と美三香がくっついた要因の1つかと思っています。それはまだ幼少期の話になりますが……。

『THE BEYOND』 11話の回想シーンにあるTVシリーズ第一期17話と26話、そして『RIGHT OF LEFT』のカットは新たに描き起こして、タイミングも似せての新規撮影になっています。当時は4：3の画角で解像度も低くかったので、新たに作る事にしました。
これは素材が残っていなくて、実はDVDを観ながら作画から背景まで新規で作り直したのですが、遜色なく再現できたと思います。

あとTVシリーズ第一期の時から「フェストゥムが日本人の受胎能力を奪った」という設定がありましたが、『THE BEYOND』では地球上の全フェストゥムがマレスペロと同化して赤ちゃんになりました。赤ちゃんの絵にファフナーのロゴが載ったのを見ると、なんか感慨深いですよね。

二代目操に関してですが、彼はアルタイルを与えられてレガートのように復活することもできたと思いますが、「竜宮島で生まれて羽佐間容子の子供――翔子のように育ちたかった」という願いを受けた形として、12話であのように島に根づいた彼を見せました。チビ操はとびっきりかわいいと思うし、それを見に帰ってくる甲洋おじさんの手には世界中のお土産がたくさん――そんな未来が見えませんか？
▲操にも新しいドラマの予感が。

ラスト、竜宮島はいつも擬装鏡面を展開して消えますが、島への脅威も薄まったことから、いろんな縛りから解き放たれた真壁一騎が外の世界を見に旅立っても消えずに航行を続けていきます。この描写からも平和の訪れ、戦いの終わりを感じられると思います。

――改めて、延べ17年にわたって『ファフナー』という作品に関わり続けたことに関して、どんな思いがありますか。

能戸　制作開始からだと18年……赤ちゃんが大人になるほどの時間を費やしたわけです。でも制作サイドの経験値が作品の骨格となっていて、物語が進めば進むほど作る側も成長しないと作れないという状況がありましたから、このラストにたどり着くためには必要な年月だったと思いますね。

そもそも制作に取りかかる以前から平井さんや鷲尾さん、いろんな人と知り合っていたことから『ファフナー』という作品が生まれているわけで、「それもまた運命だったんだな、いろんなことは無駄ではなかったんだな」って思いますね。アニメージュさんとも様々なご縁があって、あの忘れもしない2005年2月号、子供制服総士を抱きかかえる大人制服の一騎の表紙を見た時は感慨深かったです。
▲『蒼穹のファフナー』完結時の特集が掲載されたアニメージュ2005年2月号表紙。イラストは本編ラストから1年後を予想して平井久司さんが描き下ろしたものだ。実際の総士の帰還は、後に『HEAVEN AND EARTH』で描かれることに。　（C）XEBEC・竜宮島役場

――最後に、これまで『ファフナー』を応援し続けた島民の皆さんへメッセージをお願い致します。

能戸　今回もたくさんの人に劇場まで足を運んでいただき、ありがとうございました。公開の11月5日からの数日の蒼穹はすごくファフナー日和だったので、鑑賞された後の空はとても祝福されているなと感じました。

いろんな方に支えられてきた（制作開始からの）18年でした。道のりは決して平坦ではなかったですけれど、ここまで来られたことを感謝します。改めて皆さまの応援、本当に本当にありがとうございました。

能戸 隆（のと　たかし）
2004年より『ファフナー』第一期プロデューサー・設定ほか多岐にわたって作品に参加。劇場作品『HEAVEN AND EARTH』からシリーズの総監督を務め、『THE BEYOND』では監督・全話の演出を務めた。

（C）XEBEC・FAFNER BEYOND PROJECT