• 坂本龍一も参加!『さよなら、ティラノ』の見逃せない注目点【静野孔文監督インタビュー】
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2021.12.03

坂本龍一も参加!『さよなら、ティラノ』の見逃せない注目点【静野孔文監督インタビュー】

(C)2018 “My TYRANO” Film Partners


国境を越えて楽しめる映画に
ーー試写で映画を拝見させていただきました。とてもおもしろかったです。

静野 ありがとうございます。こちらも、ようやく公開できて幸せです。最初に納品をしてから各国用に再編集が行われ1年くらい経ち、さらにコロナの影響で日本での公開が延び延びになって。実は完成してからもう3年くらい経っているんです。

ーー原作・宮西達也さんの作品は、普遍的なメッセージを絵本で表現しているという特徴があります。今回の『さよなら、ティラノ』については、原作になっている3作品(『ずっといっしょだよ』、『わたしはあなたをあいしています』、『わたししんじてるの』)をアニメーション映画としてどのようにまとめたいと考えられたのでしょうか。

静野 宮西先生の作品は非常にテーマが深く、読み返すたびに受ける印象が変わってくる作品です。映画でも、一度観ただけではすべて把握できないくらいの奥深いテーマ性を盛り込めるように、シナリオを開発していきました。想定している観客はもちろん幅広いファミリー層、特にメインは子供ですが、韓国、中国、日本で合作・上映ということで、どの国の観客にも感じられる普遍のテーマ性を入れ、国境を越えて楽しんでもらえる映画を意識して作っていたつもりです。

ーーティラノサウルスのティラノとプテラノドンのプノンを中心に、種の違い、肉食と草食の違いなど、異なる考えや習慣を持つもの同士の交流や共存がテーマになっています。

静野 ベースはそうですが、そこを前面に出しすぎてしまうと、映画が大人向けになってしまうので。その部分は観てくれたお子さんたちが10年後、20年後にあらためて、大人になったときに感じてもらえばいいかな、くらいの感覚ですね。むしろ、ティラノサウルスとプテラノドンの友情、雄と雌の違いはありますが恋愛とかそういうことではなく、弱肉強食の世界での食う者/食われる者の関係を超えた、ありえないような友情物語。それを、お子さんには届けられたらいいなと思っています。

ーー絵柄も独特で、動きも観ていて楽しく、アニメーションとしても魅力的でした。原作の世界をどのように映像で表現しようと考えて作られたのでしょうか。

静野 そこについては、宮西先生がとても協力的でありがたかったですね。映像に関しては、最低限のルールさえ守れば、手塚プロさんがいちばん表現しやすいスタイルで作ってもらって構わないと言っていただけました。具体的には、手塚プロさんがいろいろな作品で交流のある江口(摩吏介)さんにオーダーして何点かデザインを描いていただき、その中から私と宮西先生が最終的にデザインを選んで決めたという流れでした。

ーー江口摩吏介さんといえば『銀河鉄道の夜』(1985年)や『グスコーブドリの伝記』(2012年)、『あらしのよるに』(2005年)など杉井ギサブロー監督作品でキャラクターデザイン・作画監督を努めていらっしゃいます。実際、今作の映像は少し『あらしのよるに』の雰囲気も感じられます。

静野 そうですね。撮影監督の佐藤陽一郎さんも江口さんと同様に『あらしのよるに』に参加していらっしゃったので。単なる塗り分けではなくグラデーションをかけるといった特殊な技法は、『あらしのよるに』で培ったものを取り入れてもらっています。

——恐竜同士の戦いのシーンの重量感も、とても見応えがありました。静野監督は『GODZILLA』3部作の監督も手掛けていらっしゃいますから、やはりモンスターバトルにはこだわりがあったのでしょうか。

静野 ははは(笑)。実は『GODZILLA』の3部作を作っている時期に、この『ティラノ』も並行して作っていたんですよ。でも、今作の戦いのシーンについては、江口さんのチームの方のおかげです。描いていただいた戦いのシーンのストーリーボードが素晴らしかったので。自分が最終的にこだわったのはむしろ、ストーリーの部分ですね。特に、最後のクライマックスに続く流れは、テーマをより明確にするために、ストーリーボードの段階でかなり時間をかけて修正させていただきました。


(C)2018 “My TYRANO” Film Partners

アニメージュプラス編集部

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