『蒼穹のファフナー』が現在劇場先行上映中の『THE BEYOND』十~十二話で、遂に事実上のシリーズ完結を迎えた。17年もの長きにわたってシリーズの楽曲を担当し、文字通り作品の大きな柱を担ってきたangelaにロングインタビューを敢行。後編となる本稿では、これまでのシリーズを振り返っての楽曲の思い出、また年末に控えた『ファフナー』曲オンリーのライブイベントへの意気込みを語ってもらった。
――これまで17年間『ファフナー』に関わってたわけですが、改めてその仕事をふり返ってみて、どんな印象を抱かれていますか。
KATSU ある意味しんどかったですね、他の仕事をしていても常に『ファフナー』が頭の片隅にあるような状態でしたから。
atsuko やっぱり長い時間が過ぎた、という感じがしますね。イメージソングの『fly me to the sky』や『Shangri-La』を当時買ってくれた中学生のファンが、今やお子さんを連れてライブを観に来られたり、キャンペーンで回ったアニメショップの店長になられていたりしますから(笑)。
――これまでのシリーズで、一番大変だったというものは何になりますか。
KATSU 楽曲数で言えば『蒼穹のファフナー THE BEYOND』なんですが……。
atsuko まず『Shangri-La』が大変でしたね。初めてのトライだったので、これが正解なのかどうかがわからず不安でした。あとは『EXODUS』かな? 『HEAVEN AND EARTH』から数年作品と離れていたので、自分の中の “ファフ味” 、っていうんですか……?
KATSU ファフナー因子、弱まってたよね(笑)。
atsuko そう、まさかやるとは思ってなかった上に、2クール放送のTVシリーズで。そのOP『イクジスト』を作る時が一番大変でした。
KATSU そうですね。『HEAVEN AND EARTH』で全て出し切った空っぽの中で作るだけでなく、島民の高い期待にも応えないといけない――そこでも『Shangri-La』と比較されるという壁を感じました。OPが2曲という発注がありまして、先に『DEAD OR ALIVE』が出来て、これがまた自信作だったものですから、それを超える曲をもう1つ……というのは、確かにしんどかったです。
――でもangelaは常に「最高」を更新していくから凄いですよ。今回も『THE BEYOND』最高! と思っていたら、さらに『叫べ』が来てウオーっと盛り上がれるという。
atsuko 『叫べ』も「後半、戦闘シーンが盛り上がって来るからもっと激しい曲を」と後で発注が来たんですよ(笑)。
KATSU でも、僕はそれが嬉しかったんです。『THE BEYOND』が作品の後半の展開についていけているかどうかが心配だったので、ずっと「曲を作りたい!」と事務所の中で言い続けていたものですから、オファーが来た時「よし! MAX出します!」と。
――KATSUさん、どんだけ『ファフナー』が好きなんだという話ですね(笑)。ちなみにこれまで『ファフナー』のために作った楽曲の中からお気に入りの楽曲を選ぶとすると……?
KATSU 僕はもう決まってます、『愛すること』です。カノンとの別れの時に流れるあの挿入歌ができたのって本当にまぐれか、もしくは何かが乗り移った結果だったと思うんですよね。
atsuko 曲が流れるシチュエーションを細かく教えて頂いていたので、カノンの気持ちに寄り添える言葉を選ぶことができましたね。ある意味、キャラクターソングと言えるかもしれません。
KATSU 俺はatsukoの書いた歌詞を読んだ時、カノンの言えなかったことが見事に補完されているから「天才かよ、すげー!」って思いましたね。あと、この曲は珍しく能戸(隆)監督からダメ出しが出たことでも記憶に残っていまして。最初はカノンへの感謝を込めて曲の頭が少し明るく始まる形だったんですけれど、「カノンは一騎や仲間たちに未練を残して死んでいくんです、ですから頭もマイナー調に直してください」と言われました。で、本編を観たらあの演出じゃないですか……本当にあの曲をangelaだけの手柄にするのは申し訳ないですよ。