• Production I.G石川光久社長が語るアニメ『攻殻機動隊』の歩み
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2021.11.13

Production I.G石川光久社長が語るアニメ『攻殻機動隊』の歩み

(C)士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊2045製作委員会


――OVAシリーズで展開した『攻殻機動隊ARISE』は、公安9課結成までの前日譚という、さらに一歩踏み込んだ内容になっていくわけですが、この辺りでの士郎さんとのやり取りは?

石川 士郎さんは自分のやりたいことがハッキリしているし、いろんなものが頭にあるものですから、ひとつの質問をすると100通りの反応が返ってくるんですよ(笑)。そういう性格なので、企画への関わり方は全面的にやるか、まったく手を付けないかのどっちかなんですよ。というのは、以前関わったOVA『ブラックマジック M-66』――北久保(弘之)さんや沖浦(啓之)と一緒に作った作品ですけれど、どうやらあれがトラウマになっているらしくて。

――ええっ、そうなんですか!

石川 のめり込めばのめり込むほど、アニメのスタッフに大きな負担をかけてしまったことが胸に残っているらしくて、「そうなってしまうくらいなら自分は一切手を出さない方が良い」と判断されたんだと思います。

――『ARISE』は黄瀬和哉さんが総監督を務めたのも大きな驚きでした。

石川 黄瀬は『機動警察パトレイバー 劇場版』や『新世紀エヴァンゲリオン劇場版』、もちろん『GHOST~』の作画監督として活躍して、押井さんの信頼も実に厚いんだけれど、教育的な面から考えても1回黄瀬に監督というのはどれだけ大変な仕事なのかを経験させた方がいいだろう、と。

――そういう理由だったんですか(笑)。

石川 本人はどう思ったかは知りませんけれど、これで一皮剥けてくれるといいなと思いました。まあ実際やらせてみたら、決断力はあったからそれは良かったんですが、一日コツコツと仕事を進めるタイプじゃないんですよね……基本、飽きっぽい(笑)。あと、常に頭の中ではアニメのことを考えてはいるんだけど、すごく素行が悪く見えるんですよ。机に向かわずプラプラ遊んでいる風に見えるんです。

――そんなに念を押さなくても(笑)。

石川 そういう男を監督に据えるなら、やっぱり『攻殻』しかないんです。他の原作だったらそうはいかない。だから士郎さんに「黄瀬が監督をやるので自由にやらせてください、その代わり(アニメの)動きはしっかりとやります」とお願いして。

――『ARISE』はこれまでのイメージを一新するようなシリーズになりましたね。キャストも一新して、脚本も冲方丁さんが手がけるなど挑戦的な姿勢を感じました。

石川 いい意味で暴走していましたよね。あとで押井さんに聞いたら、「これまでの素子で一番好きなのは、黄瀬のやった『ARISE』の素子だ」「作品も『攻殻』のシリーズ中で完成度は高いんじゃないか」とまで言っていましたね……でもね、それは作品が動いている時に言ってくれなきゃ(一同笑)。

――そうですよね、宣伝に使える一言ですから(笑)。

石川 本当ですよ。でもね、押井さんが気に入っているってことは、世間の人向けになっているかどうかが怪しいという……これがまた難しい問題ですよね(笑)。

――ちなみに、石川さんの中で一番大変だった『攻殻』タイトルは何ですか。

石川 そりゃもう『イノセンス』です。面白かったとも言えるけど、すごい無茶をやったと思いますね。でも、今観ても衰えない強度を持っている。CG技術だけでは作れない、あの時代だからこそ作れたものが残せたと思うんです。

(C)士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊2045製作委員会

アニメージュプラス編集部

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