• 劇場版『パトレイバー2』が幻視する 「TOKYOウォーズ」の風景
  • 劇場版『パトレイバー2』が幻視する 「TOKYOウォーズ」の風景
2021.10.29

劇場版『パトレイバー2』が幻視する 「TOKYOウォーズ」の風景

(C)1993 HEADGEAR/BANDAI VISUAL/TOHOKUSHINSHA/Production I.G


軍事力を持つ自衛隊が決起した際に、警察はいかに無力であるか――『二課の一番長い日』では、核を搭載した巡航ミサイルで国家を揺さぶるという明解な行動によって、その状況が示されていた。
しかし『2 the Movie』では当時の社会情勢をシミュレートした、さらにハードなポリティカルアクションが展開。自衛隊の海外派兵を彷彿させる導入、通信網の破壊や飛行船を利用したガスによる無差別攻撃の示唆によって生み出される静寂なる都市占拠、無機質な高層ビルに覆われた首都の脆弱さを雪が舞う冬の冷たさと重ねる形で描写される「戦時下の東京」(二・二六事件のイメージ)、さらに緊急時下の警察上層部の責任転嫁や権力争いという副次的な問題を積み重ねることで、よりリアルで不穏な空気を孕んだクーデターの風景が描かれていく。
▲柘植の拠点となる18号埋立地で激しいバトルが展開!

本来見せ場となるはずであるレイバーによるメカアクションは最低限に抑えられ、後藤と南雲というサブキャラクターが主人公として活躍する物語は、ロボットアニメというジャンルから考えるとイレギュラーな要素ばかりで固められた印象だ。しかし、警察の内部構造が抱える問題を描いてきた『パトレイバー』の枠内でなければ、このような大胆なアプローチができなかったのも間違いない。

『2 The Movie』は、ある意味押井監督自身が『パトレイバー』を総決算する “終わらせるための物語” だったはずだが、2015年に公開された実写版ドラマ『THE NEXT GENERATION パトレイバー』の劇場版『THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦』で、押井監督は『2 the Movie』の続編とも言える、柘植の起こした “幻のクーデター” から13年後に起こるテロ事件を描くことになる。
『2 the Movie』で首都・東京にもたらされた変革の風景は、押井監督の中にいまだに残り続けているのかもしれない。

>>>『機動警察パトレイバー2 the Movie』場面カットを見る(写真8点)

『機動警察パトレイバー2 the Movie』
2021年10月31日19時より、BS12トゥエルビ『日曜アニメ劇場』にて放送

STAFF:監督/押井守 演出/西久保利彦 原作/ヘッドギア 脚本/伊藤和典 キャラクターデザイン/高田明美、ゆうきまさみ メカニックデザイン/出渕裕、河森正治、カトキハジメ メカニックデザイン協力/佐山善則、伊東守、藤島康介 撮影監督/高橋明彦 美術監督/小倉宏昌 編集/掛須秀一 音楽/川井憲次

CAST:後藤喜一/大林隆介 南雲しのぶ/榊原良子 篠原遊馬/古川登志夫 泉野明/冨永みーな  太田功/池水通洋 進士幹泰/二又一成 山崎ひろみ/郷里大輔 シバシゲオ/千葉繁 榊清太郎/阪脩 荒川茂樹/竹中直人 柘植行人/根津甚八

(C)1993 HEADGEAR/BANDAI VISUAL/TOHOKUSHINSHA/Production I.G

アニメージュプラス編集部

RECOMMENDEDおすすめの記事

RELATED関連する記事

RANKING

人気記事