• エンタメと思索に満ちた『機動警察パトレイバー the Movie』を楽しむ
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2021.10.22

エンタメと思索に満ちた『機動警察パトレイバー the Movie』を楽しむ

(C)1989 HEAD GEAR/BANDAI VISUAL/TOHOKUSHINSHA


『the Movie』では初期OVAの世界背景として語られていた、東京湾岸の再開発計画「バビロンプロジェクト」が重要なファクターとして扱われている。
それは地球温暖化による海水面上昇に備えて東京湾に横断道路を兼ねた巨大堤防の建設、そして湾内の干拓を進めることで土地造成を行う国家事業。都市部で発生した直下型大地震によるガレキ処理も兼ねたこの事業をきっかけに、多足歩行型作業機械=レイバーの普及を進める一因にもなっている。
帆場の足取りを辿る松井刑事たちが目にする風景には、バブル経済の影響によって変容しつつあった当時の東京を批評する視点も重ねられていく。
▲乱立する高層建築の足元に横たわる昭和の生活の残骸。二つに引き裂かれた東京のリアルがオーバーラップする。

帆場暎一のイニシャル=E・HOBA(エホバ)、「バビロンプロジェクト」が神に壊されたとされるバベルの塔、レイバー暴走に関係する巨大建造物「方舟」はノアの方舟、大型台風は堕落した人々を滅ぼす洪水など、作中にちりばめられた旧約聖書や新約聖書の要素も物語の解釈の深度を広げていく。事件そのものが「神の啓示」を想起させるなど、最先端テクノロジーや科学に対する懐疑・妄信への警鐘という読み解きも可能だ。

ちなみに本作は1989年公開時のオリジナルサウンド版、そして1998年のDVD化に合わせて音楽・効果音を一新、さらにオリジナルキャストで再アフレコを行って5.1chサラウンド化した「サウンドリニューアル版」という2つのバージョンが存在する。
今回は、昔からのファンから今なお厚い支持を受けているオリジナルサウンド版での放送となる。初公開時の音声は勿論、衝撃と感動を追体験できる貴重な機会をお見逃しなく。

>>>『機動警察パトレイバー the Movie』場面カットを見る(写真9点)

(C)1989 HEAD GEAR/BANDAI VISUAL/TOHOKUSHINSHA

アニメージュプラス編集部

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