母親を亡くし、大好きだった “走ること” に向き合えなくなった12歳の少女カンナ(声:蒔田彩珠)。そんな彼女の下に、うさぎ・シロ(声:坂本真綾)と鬼の少年・夜叉(声:入野自由)が現れる。彼らに導かれるようにして出雲へと旅するカンナの姿を描いた映画『神在月のこども』が10月8日より全国の劇場で公開中。今作で主人公のカンナ役に挑んだ女優の蒔田彩珠さんに、声優初挑戦ならではの苦労や、声優と女優の演技の違いなどを伺ったインタビューをお届けする。
【Voice Feature:07 『神在月のこども』蒔田彩珠】
――初めてとなる声優のお仕事になりましたが、今回のカンナ役はどのように決まったのでしょうか?
蒔田 オファーしていただいて決まりました。今まで声のお仕事をしたことがなく、カンナが小学生という役柄の設定もあり、どうなるのかなという思いが強かったです。でも、いつかやってみたいと思っていた声のお仕事だったので、初めての作品が『神在月のこども』で本当に良かったなと思っています。
――初挑戦で主演ですもんね。実際に声のお仕事をやってみていかがでしたか?
蒔田 想像していたよりも凄く難しくて……。やはり声だけで心情や場面を表現しなきゃいけないというのは、今までの演技表現とは違う部分もあって、凄く苦戦しました。
――普段は女優さんとして演技をされていますが、女優と声優とでは演じ方に大きな違いはありましたか?
蒔田 違いましたね。普段の映像のお芝居だと、表情や仕草など、自分の身体や声を使って感情や気持ちを表せられるのですが、声のお芝居だと「声だけでしか表現できない」という制約があり、それが大きな違いだったと思います。難しかったです。
――そうなると、感情移入の仕方も変わってきたり?
蒔田 今回のアフレコは、既に他のキャストの方の声が入っている映像に、自分の声を入れる録り方でした。普段は相手がいてこそのお芝居なのですが、今回は一人での収録だったので、気持ちのやり取りが難しくて……。既に入っている声に対して、どう声をハメるかが大変でしたね。
――誰かと掛け合いがあるわけではなく?
蒔田 コロナ禍ということもあって、掛け合い部分もずっと一人での収録でした。より難しく、孤独でしたね。
――収録時間はどのくらいかかったのでしょうか?
蒔田 3~4日位かかりました。当初は1日で終わる予定だったのですが、苦戦に苦戦を重ねて(笑)。
――そんな苦戦を重ねていたとは思えない自然な演技でしたが、演じていて楽しかったところは?
蒔田 自分としては演じ方を変えたと思っても、実際に聴いてみるとさっきとほとんど変わっていなかったりしたところは、「どこまでこれを変えられるんだろう?」と挑戦するようで楽しかったです。
――凄く前向きですね! 既に声が入った状態で演技されたとのことですが、シロ役の坂本真綾さん、夜叉役の入野自由さんお二人の声を受けて引き出されたと感じたものはありますか?
蒔田 お二人の声が先に入っていたことで、作品のベースみたいなものが既に出来上がっていたので、そこに合わせられて良かったです。自分の声を入れて通しで聴いてみると、カンナが一番元気な役のはずなのに、自分の声だけテンションが低いというか、普段の声のままだったりして……。なので、お二人に合うようにグンとテンションを上げていきました。自分が一番最初(の収録)じゃなくて良かったです(笑)。
――音響監督からのディレクションはいかがでしたか?
蒔田 普段のお芝居だと、テンションを上げなくても仕草や表情で気持ちが表現できるのですが、元々あまり高くない私の声だと、どうしても大人しい感じになってしまって。なので、「カンナは小学生なので、できるだけテンションを上げて」と言われましたね。基本的にどのシーンも毎回録り直していました(笑)。
――小学生の役って難しいかと思いますが、役作りはどのように?
蒔田 家族といるシーン、友達といるシーン、夜叉たちといるシーン、それぞれ声もテンションも微妙に違うので、その差みたいなものは、出来るだけ付けたいと思って演じていました。
(C)2021 映画「神在月のこども」製作御縁会
アニメージュプラス編集部/写真:井上大輔