• 『Sonny Boy』不条理な世界とナチュラルな会話劇の真相? 市川蒼×小林千晃インタビュー
  • 『Sonny Boy』不条理な世界とナチュラルな会話劇の真相? 市川蒼×小林千晃インタビュー
2021.08.12

『Sonny Boy』不条理な世界とナチュラルな会話劇の真相? 市川蒼×小林千晃インタビュー

(C)Sonny Boy committee


手探りで作った自然な会話

ーー非常に独特な本作ですが、お二人は作品の第一印象はいかがでしたか。

市川 オーディションの時、(オーディションで演じる場面の)原稿しか手元になくて。キャラクターの絵や設定もわからず、セリフのト書きから読み取るしかありませんでした。ただ、その時点から、僕が受けた長良のセリフの中にとにかく「夏」を感じました。クーラーの効かない職員室の中で三者面談をしている、第1話のシーンだったのですが、その段階で作品の空気感を感じることができて、すごい作品だなと感じていました。

小林 僕は朝風役を最初に受けましたが、セリフは反抗期然としているというか、かなり乱暴な口ぶりで、でも、思春期ならではのトガった部分がかわいくも感じて。ですから、自分の中で「ザ・中学生」的な方向に落とし込んで、今の自分がやるならどうなるだろうと考えつつやってみました。市川さんの言うとおり、今回はとにかく作品や世界観についての資料がなかったので、自分でイメージを膨らませました。

ーー作品の印象というよりは、キャラクターを手掛かりに入っていくような形で。

市川 そうですね。最初は情報がまったくないので、どういう作品になるのかも予想がつきませんでした。オーデョションに受かった後、僕はアフレコをやる前に夏目(真悟)監督や音響監督のはた(しょう二)さんと打ち合わせをさせていただく機会があったのですが、そこでお話を聞くまではどういう作品になるのかまったく想像もつかなかったです。

小林 僕は、その打ち合わせすらなかったです(笑)。本当に、第1話の台本をもらうまでは、まったくわかりませんでした。「(役が)決まりました」と言われ、市川さんも長良役に決まったと聞いて、決まった同士で「あれ、どうなるんですかね?」みたいな話もしましたが、お互いどういう話かわからないから、まったく会話が膨らまなくて(笑)。アフレコ現場に行ってからはじめて、どういう雰囲気で、どういう作品を作りたいんですとお聞きしました。しかも、朝風がどういう思いを抱えていて、どういうことを表現したいのかといったキャラクターごとの細かい情報はなかったので。本当にその場、その場で想像していった感覚です。朝風の場合、ト書きに「能力でガラスを割る」とか書いてあったので、一瞬「能力バトルものなのかな?」とも思いましたが(笑)。ただ、どうやらセリフに生っぽい言葉をチョイスしている感じがあったし、掛け合いも多かったので、人間ドラマ的なものを描きたいのかな、と。ですから、バトルもののように作り込んでいくといより、素の状態でしゃべるような雰囲気にしたほうがいいだろうなと思いました。

ーー実際、この作品はSFファンタジー的要素もありますが、キャラクターはリアルというか、体温を感じる等身大の雰囲気を感じます。市川さんは監督に「あまり台本を読み込むな」と言われたそうですが、収録現場ではどのようにあの雰囲気が生まれているのでしょうか。

市川 僕は、どの作品でも基本的に、台本をいただいたらすぐその日に読んで、チェックして「こういう風にもっていこうかな」と考えるんです。でもこの作品に関しては、自分だけで考えて(芝居を)固めてしまっても、変に浮いてしまう気がしたので、本当に直前までなにもしなかったです。

小林 あえて新鮮な状態で。

市川 そう、常に新鮮さを大事にしながら、その時に感じた印象のままやるように心がけていました。実際、「このシーン、考えすぎていたらドツボにハマっていただろうな」と感じるシーンもいくつかありました。この作品はモノローグがほとんどないので、キャラクターが今、何を考えているのかわからない。わからないことを考え過ぎちゃうと、逆にリアルではないお芝居になってしまうんです。とにかく考えないように、考えないように……と頑張っていました。

小林 アフレコがコロナ禍だったので、第1話は僕と市川さんを含めた4人くらいでスタートしたんです。つまり、僕らの収録が最初だったので、僕らが最初にキャラクターの掛け合いの雰囲気を作っていくということ。その収録で、市川さんと大西(沙織)さんの掛け合いを見ていたら、やはりお二人が肩の力を抜いて、あまり作らずにやっていたので、僕もそこに乗っかっていきました。その後に収録したみなさんは僕らの声を聴きながらだったと思うので。やはりそれに合わせて、肩の力を抜いてくださったのかなと思います。結果、第1話を観てやっぱりそのほうが作品に合っているなと思いました。

市川 そうでしたね。

(C)Sonny Boy committee

アニメージュプラス編集部

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