• 【細田守インタビュー・後編】ネットの世界があるという前提で強く育ってほしい
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2021.07.18

【細田守インタビュー・後編】ネットの世界があるという前提で強く育ってほしい

(C)2021 スタジオ地図


シビアな家族像

ーーもうひとつ、細田監督が描き続けてきた “家族” というモチーフも、今作では少し違う切り口で描かれていますよね。主人公含め、あまり “上手くいっていない” 家族が登場します。

細田 思春期の若い子を主人公にしたから、親子の関係ってやはりただじゃ済まないと思うんですよ。昔と比べて昨今は、友達同士みたいな親子関係も多いようですが、でもやっぱり親との葛藤は思春期ならどういう方向性であれ、体験することで。10代の子を描く上では、そういう部分もしっかり引き受けるということですね。若い人が成長していく上での環境としての家族、親というのはどういう形であれ必要なもの。それがたとえ疑似家族であっても、友達みたいな家族であっても、いわゆる「毒親」みたいな親であっても、なにしろ子供や若い人はひとりでは生きていけない。それをエンタテインメントの範囲で描くことも大事だと思います。

——ネットもシビアだけれど、現実も甘くない。

細田 そう、それもまた、ネット社会の変化とは別の部分で僕らが今、直面している問題のひとつじゃないですか。親子関係もやはり生やさしくはないんですよね。そういう中で思春期の女の子を主人公にすると、必然的に現実的な問題に直面しながらどう乗り越えるかということが、求められる。それに、「どう生きるべきか」という問題意識はやはり今の社会では女性のほうが強くもっているから。それはそうですよね。女性の人権問題を改善しようという機運に、今さらというくらい、ようやく世界中がなっているわけだから。女性問題だけじゃなくて、人種的な問題もそうで。これまで “当然のこと” と思われていたことに対して、しっかり問題として考えましょうという社会の流れがある。新しく若い人に向けて作るアニメーションの中で、そういう流れはやっぱり無視できないと思います。そういうものに今、向き合わなきゃいけないような社会的、世界的な時代の中に僕らはいるということですよ……と、こういうことを言うと「細田の作品は社会派だな」とか言われるけれど(笑)、全然、社会派じゃないですよ。ただ、現状の社会、環境をちゃんと踏まえて描こうとしているに過ぎないっていうことです。要は「エンタテインメントの作品に、そういう現代社会の問題意識は不要だ」っていう人もいるかもしれないけれど、そんな訳ないじゃん、甘い夢ばかり見せるのがアニメなんですか? と言いたくなっちゃうんです。アニメに求められているのが、単なる現実を忘れる道具だとしたら、それはつまらなすぎますよ。アニメにはもっと可能性があるんですから。

ーーそして、そういう世界の中で若い人たちにがんばってほしいと伝えたかった。

細田 今の社会に負けないでほしいという気持ちですよね。この物語を通して(主人公)は強くなります。その姿が、「負けないでほしい」という思いを体現しているんです。

(C)2021 スタジオ地図

アニメージュプラス編集部

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