• 【細田守インタビュー・前編】もうひとりの自分と向き合い強くなる主人公
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2021.07.17

【細田守インタビュー・前編】もうひとりの自分と向き合い強くなる主人公

(C)2021 スタジオ地図


ネットと作品の変化

ーー今、お聞きしたことと通じるのですが、個人的に細田監督作品は続けて観ると楽しいという側面もあると思います。

細田 ははは(笑)、そうですか。

ーー過去の監督作品との関連や変化に注目すると、また違ったおもしろさに気づける。今回の『竜とそばかすの姫』もそうで。たとえば『ぼくらのウォーゲーム!』や『サマーウォーズ』では基本的に、インターネットの可能性を肯定的に捉えていたと思います。でも今回の映画では、ネガティブなイメージを前面に出している印象がありますが。

細田 そうですね。でも、これでもまだ緩いほうで。本当はね、今も言ったようにネットといえば酷い誹謗中傷みたいなイメージに変化しているということは、無視できないですよね。人間の「本音」が露わになる世界、そして、露わになっていることが平気な世界とでも言うのかな。そういう中で子供や若い人がどう成長していくのかと考えると、けっして生やさしくはない。ただでは済まないだろうという気がするわけですよ。ある人が何かを表現して世に出る力があるとして、でも、そういう人がネットの洗礼を受けて……ということも現実世界でたくさん起こっていますよね。確かにね、やはり『ぼくらのウォーゲーム!』の頃はもっと牧歌的でした、今から振り返ると。何が牧歌的って、若い人しか(インターネットを)やっていなかったということ。

ーー『ぼくらのウォーゲーム!』の時は、大人がまだよくわかっていないインターネットを子供たちが肯定的に使いこなす話だったわけですよね。

細田 そうそう、そうです。

——『サマーウォーズ』はインターネットがさらに一般化して、「これ使ってみんなで上手くやろう」という話だったと思いますが、今回は逆に「便利だけどいろいろネガティブな面もある」ということが見えてきて、それが現実になっていることを真正面から描いている。

細田 『サマーウォーズ』の頃から、多くの世代がインターネットに触れる世の中になって、それがさらに現実化しているのが現在。そういう変化はあると思います。2000年より前は、仕事上でインターネットを使ったとしても、日常生活にこんなに深くは食い込んでいなかったわけですから。思えば、インターネットが一般化してからまだ25年も経っていないんですよ。『ぼくらのウォーゲーム!』が20年前って言ったけど。

ーー今思うと、早かったですね。

細田 でしょう(笑)? それを考えると、世の中にこれからどういう変化が起きるか。何が起きてもおかしくない時代に、僕らは生きているわけですよ。25年前に、僕らが今みたいな現在を想像できたかというと、できていない。ということは、今の子供たちが25年後にどういう世界で生きるかもまったく予想できないと思います。

(C)2021 スタジオ地図

アニメージュプラス編集部

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