• 神谷浩史と久米田康治。最強タッグが生む、明日への糧
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2021.07.08

神谷浩史と久米田康治。最強タッグが生む、明日への糧

後藤可久士役で出演する神谷浩史さん 写真/大山雅夫

昨年放送されたTVアニメ『かくしごと』。漫画家の後藤可久士とその娘の姫が織りなす物語はTVを飛び出し、7月9日から『劇場編集版 かくしごと ―ひめごとはなんですか―』となって劇場公開される。久米田康治氏が描いた原作漫画に即し、TV版とは異なるラストが描かれる今作。主人公の後藤可久士を演じた声優の神谷浩史さんに、作品の思い出のみならず、久米田作品の魅力についても伺ったインタビューをお届けする。

――今回、装い新たに、『かくしごと』が劇場版になると聞いた時のお気持ちをお聞かせください。

神谷 最初は、久米田先生から聞いたんです。久米田先生の画業30周年のトークイベントにゲストでお呼ばれした際に、久米田先生が「よろしくお願いします」ということをおっしゃったので、「何がですか?」と聞いたら、「聞いていないんですか?」って。「何の件ですか?」って聞いたら、「劇場版が……」っておっしゃるので、そこで知りました。僕、普段から台本が出来上がって手元に来たくらいのところで、作品のことを知るのが当たり前なんです。ところがどっこい、久米田先生的には僕が知らないものだから、どうやら嘘なんじゃねえかって不安になったらしくて。騙されてると不安になるという、そういう1コマがありました(笑)。

――今回の作品は劇場編集版ということで、TVシリーズとは結末が違うのですよね?

神谷 元々、(漫画の)原作と一緒に同じ最終回を迎えるという計画で、『かくしごと』のアニメーションは作られていたのですが、原作の方が1カ月遅れたことによって、久米田先生がTVシリーズとは違うエンディングを思いつかれて。アニメーションとは違うオチになった最終回を、劇場編集版としてアニメのほうに逆輸入するという形での今作なので、久米田先生が遅れずに当初の計画通りに進んでいたら、もしかしたら存在しなかったかもしれないということを考えると、本当に奇跡的な感じで出来た劇場編集版だと思います。

――劇場編集版をご覧になって、ストーリーについてはどんな印象をもたれましたか?

神谷 今回、『ひめごとはなんですか』というサブタイトルがついていて。ある意味、姫目線で物語が進んでいく内容になっているので、姫の目線で物語をまとめるにあたってある意味必要のないところが、だいぶ斬新なまとめ方をされていて、ちょっと面白かったですね。そりゃそうだよね、娘の目線からしてみたら、父親の交友関係とか、割とどうでも良いよねって(笑)。なので、特にTVシリーズをご覧になっていた方には、それがどういった形で伝わるのかっていうのは興味があるな、というような内容になっていました。

――確かにラブロマンスのあたりはざっくり編集されていました。神谷さんは『さよなら絶望先生』でも、主人公の糸色望役として久米田先生の作品に出演されていますよね。

神谷 『さよなら絶望先生』に参加させていただいた時に、糸色望がどういう声でどういうリズムで喋るのかということが、全く分からなかったんです。なので「どうしよう」って……。それまで一ファンとして、『絶望先生』を読んでいましたから、「この役をやる人は大変だろうな」くらいにしか思っていなかったんです。当時はまさか自分がやることになるとは思っていなかったので(笑)。ですが、第1話のアフレコで「死んだらどうする!」という最初の台詞をテストで音に出した時に、「あ、この人こういう風に喋るかも」っていうのが自分の中で生まれたんですね。そこから先は本当に迷うことなく、アフレコ出来ました。もちろん3期に至るまでに色々とソリッドになっていた部分はあるのですが、雛形は第1話でほぼほぼ完成していて。それは何か、降ってわいたようなものだったんです。この『絶望先生』で、久米田康治作品のキャラクターはこういう風に喋る、みたいなものを僕達が作ったんだろうなっていう自負があるんです。なので、今回の『かくしごと』の後藤可久士という役を任されたことは、凄く責任重大でした。新しいキャストの人達がどういう芝居をするのか、それも全部飲み込んだ上で、ちゃんと作品を形作っていかなきゃいけないので。

――『絶望先生』と『かくしごと』では制作会社も監督も違いますもんね。

神谷 両方とも僕がやらせていただいているので、より、久米田作品はこうだよねという印象づけにはなったのかなと思います。それが良いことか悪いことかは別ですけれど。でも、その答えは、今後、再度久米田先生の作品がアニメ化される時に出るんじゃないかなと思っています。もちろんその時は本当に僕じゃなくて良いと思うし、もし求めてもらえるのであれば、また別のアプローチを探りたいと思っています。

(C)久米田康治・講談社/劇場編集版かくしごと製作委員会

アニメージュプラス編集部/写真:大山雅夫

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