• 『機動戦士ガンダム』の音にリスペクトを捧げた『閃光のハサウェイ』
  • 『機動戦士ガンダム』の音にリスペクトを捧げた『閃光のハサウェイ』
2021.06.13

『機動戦士ガンダム』の音にリスペクトを捧げた『閃光のハサウェイ』

音響にも新たな挑戦が試みられた『閃光のハサウェイ』 (C)創通・サンライズ



――具体的に、どういった部分がそれに当たりますか?

笠松 例えば、劇中に登場するモビルスーツに付けられた動作音です。巨大ロボットを「機械」と解釈するならば、工業製品的な音のようなリアルに寄ったものが正しいのかもしれません。おそらく、ハリウッドならそちらを選びます。しかし、実際のモビルスーツの音はそっちの方向ではなく、もっと独特な音になっている。そこがまだ我々が見たことのない「軍事転用されたロボット」という設定にリアリティを感じさせてくれるんです。もちろん音自体の時代感や質の面での古さは否めませんが、「音色」という意味では最高ですよ。

――笠松さんが感じたそれらのイメージは、本作でも引き継がれているのでしょうか。

笠松 そうですね。特報映像を作る時に村瀬さんと最初にお会いした時、「僕は可能であるなら最初の『ガンダム』の音を引きずりたい」と伝えまして、「それはそうですよね」と村瀬さんがお返事されていた記憶があります。

――『機動戦士ガンダム』のイメージを踏襲しつつ、現代のサウンドへと再構築していった?

笠松 はい、しかしその表現はとても難しくて、作業中にも「これは再構築なのか、それとも単に『機動戦士ガンダム』を模倣しているだけなのか?」と自問自答しつつ、ずっと考えながらやっていました。先ほど言いましたモビルスーツ周りの音に関しては、特に大きな命題でした。
▲モビルスーツの音に腐心した笠松さん。

――作業の中で特に意識された部分は?

笠松 「音を『ガンダム』にしなくてはいけない」というプライオリティが高い一方で、いわゆるドラマパート、平場の部分に関してもきっちり作品の世界観が見えるようにしたいと思っていました。これは村瀬さんから直接オーダーされたわけではないですが、僕に依頼してきたのはきっとそういう部分を求めたからではないか、と何となく思っています。映像がやはり村瀬ワールドという感じで、多分どのシーンを切っても村瀬さんの頭の中では確実に理論武装されているんだろうなと思いました。『閃光のハサウェイ』という世界線の中でのリアリティがあって突飛な部分はないので、音の演出に関してはあまり迷いがなかったです。もちろん、個々の音に関してはものすごく試行錯誤していますが。
▲村瀬監督の求めるリアルな世界観を音響で支える。

――村瀬監督の映像は実写的なので、その辺りも笠松さんとは相性が良かったのかもしれないですね。

笠松 ええ。村瀬さんとは話も早くて、例えば爆発の音の距離感について話をしていても「本当は音が届くまで3秒以上かかるんだけれど、そこまではいらないよね」というような感じで、全部説明しなくてもどんどん話を展開できましたから、そういう意味ではやりやすかったです。

笠松広司(かさまつ・こうじ)
音響効果会社「デジタルサーカス」代表。TV・映画・ラジオ・DVDなどの音響効果、さらには音楽プロデュース、バラエティ番組の効果など幅広く活躍。『ゲド戦記』(2006)、『崖の上のポニョ』(2008)、『風立ちぬ』(2013)、『海獣の子供』(2019)、『きみと、波に乗れたら』(2019)、『映画 えんとつ町のプぺル』(2020)など、話題の作品を多数手がけている。

>>>実写のリアルを追求した『閃光のハサウェイ』場面カットを見る(写真9点)

(C)創通・サンライズ

アニメージュプラス編集部

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