2021年6月2日にリリースされる、ASCAさんのニューシングル『カルペディエム/ヴィラン』。放送中のTVアニメ『すばらしきこのせかい The Animation』のEDテーマである『カルペディエム』と、カバー曲『ヴィラン』。2曲それぞれに込めた想いをASCAさんに熱く語っていただいたインタビューの後編をお送りします。
――もう1曲の『ヴィラン』についてもお伺いしたいのですが、この曲、驚きました。何だかたくさんの人格があるような曲で……。
ASCA そうなんですよ。
――今回はどんな形でカバーが決まったのですか?
ASCA 前回のアルバム『百希夜行』で「命に嫌われている。」というボーカロイド楽曲をカバーさせていただいたのですが、その流れもあって今回もカバーしようという話になりました。『ヴィラン』という楽曲が前から好きだったこともあるのですが、『カルペディエム』と並べた時に、ちゃんと意味のあるというか通ずるものを選びたかったので、サウンドにも、歌っている内容(自由を叫んでいる)にも共通点があるなと感じて『ヴィラン』をカバーさせていただきました。
――オリジナル曲とは異なるアレンジですが、アレンジはどなたがされたのでしょうか?
ASCA アレンジは私のデビューシングルから携わってくださっている、Sakuさんと重永亮介さんにお願いしました。
――オリジナルよりも重く低いアレンジになっていますね。
ASCA 原曲よりもキーが低くなっています。この楽曲自体が「性」について歌っているということで、キーを下げることで、私の声質が男性とも女性とも取れないようなゾーンに行くことを見越して、お二人がアレンジしたんじゃないかなと思うんですよね。勝手な解釈ですけど……。
――中性が表現されているんですね。今回初めてASCAさんのカバーを聴いた時、最初のフレーズの「きっと手を繋ぐだけでゾッとされる」の「ゾッとされる」の部分になった瞬間に、ちょっと人が変わったような歌い方になってびっくりしました! その後もどんどん色々な人格が出てくるようで……。
ASCA 細かい! 嬉しいです。
――これはどうやって歌われていたんだろうと思って。
ASCA これはもう、丸々一気に歌っています。
――通しで一気にですか?
ASCA はい、分けてないです。
――え? では、瞬間瞬間であんなに声色を変えていっているんですか?
ASCA はい。それがこの曲に引き出してもらった私の新たな歌の引き出しだなって思っています。この歌に「多種多様な性」というフレーズがあるのですが、そのフレーズを見た時に「一人」として歌う曲じゃないなと思って。この歌の主人公は自分のことをヴィラン(悪党)と言っているんですよね。だから、化け物感というか、ちょっとイカれている感じを声で表現してみたり、まだまだ無くならない性についての差別に対して馬鹿馬鹿しいと世界を馬鹿にしたような歌い方もしたり……。今回は完全に、自分のことをヴィランと言っている主人公になりきって歌いましたね。
――歌い方については、「人格を変えるように」とかディレクションがあったのでしょうか?
ASCA いえ。まずはさらっと何も表現せずに歌ってみたんです。レコーディングには、Sakuさんと重永さんがボーカルディレクションとして来てくださっていたのですが、そこで二人が「どうしよう、これ」って。二人が歌う人ではないのにめちゃくちゃ悩んでくれて、会議が始まったんです。そこで、「あ、このままじゃ今日レコーディング終わらないな」と思ったので「もう一回歌わせてください」とお願いして、自分が表現したい人格を歌ってみたら、「え? それいいじゃん。最初からそれ歌ってよ」と言われまして。そこからは特にディレクションはなかったですね。ただ、テイクを選んでいく作業が大変で。語尾一つとっても、こっちのほうがアホっぽくて良くない? とかこっちの方がふざけててヴィランっぽいよねとか。みんな意見が違うんですよ。だから、今までで一番セレクトに時間がかかった曲になりました。