――吾朗監督との仕事はいかがでしたか。
武内 もともと建設コンサルタントの仕事をされていた方だから、(美術に関して)細部までこだわりがあるんですね。
例えば家の窓枠とか梁の木材の合わせ方は絶対チェックされるし、モデラーさんにドアの木材の木目の方向についてオーダーされているのを見たときは、最初は「ちょっと大変かも」って思ったんです(笑)。でも、この監督と仕事をすれば、絶対自分の実になるし、アーティストとしても成長できる、そう感じました。
しかも、吾朗さんは自分の頭の中に絵コンテで描いたもののディティールが入っているので。聞けば答えてくれるし、ぱっと本を開いて「ここにある」とか教えてくれる。単純に一緒に仕事をするっていうのが楽しかったのもありますが、言ってることが最初から最後までブレないリーダーとして居てくれたので、仕事相手として貴重な人に出会えたと思っています。驚いたのが、吾朗さんがマンドレークの持っている新聞のモックアップ(模型)を自分で描いて作っていた時があって。多分、その時、それができるスタッフがいなかったんだと思うんですけど、「そんな地味で目立たない、それでいてめちゃくちゃ面倒くさい仕事を監督自らがやるんだ」と衝撃を受けたんです。
作品を完成させるためには、自分の仕事の範囲を自分で狭めるのではなく、やれる事は何でもやる。吾朗さんからそれを学び、気持ちを切り替えたのを覚えています。
――ちなみに、ジブリ作品では何が好きですか。武内 私は『ハウルの動く城』が好きなんですが、今回「魔女の家」の作業部屋は、ハウルの寝室やバスルームも意識していました。魔法をモチーフにした作品が世に出たら、絶対に比べられる気がしたんです。……でも作品のメインとなる場所なので、絶対見劣りしない様に絵にしよう、負けたくない!って思って作っていました。あまり言わないようにしていたんですけれど(笑)。
(C)2020 NHK, NEP, Studio Ghibli
※このインタビュー完全版は、「ROMAN ALBUMアーヤと魔女」に掲載されます。