鈴木 それである時、宮さんが何を思ったのか、(宮崎)吾朗君を説得に行ったんです。「これをやれ!」と。
これまでの吾朗君の企画は、みんな宮さんに押し付けられた企画だったわけですよ。『ゲド戦記』、『コクリコ坂から』もそうだし、『山賊の娘ローニャ』っていうのも実を言うと宮崎駿が「おもしろいからやろう」ってずっと言ってた企画のひとつですから。今度こそ自分のオリジナル企画で、と動いている彼に、宮さんがまた本を押し付けたわけですから、彼は気分を悪くしたと思うんです(笑)。
ところが何故か、吾朗君がこの企画を「面白い」と思ってくれて、結局『アーヤと魔女』をやることになった、それが経緯ですよ。
――今回3DCGで作るというのは鈴木さんからの提案だそうですが。鈴木 そうです。日本では3DCG作品はなかなか成功していないので、吾朗君も当初は「セルルックでやりたい」と言っていたんですね。でも僕は「せっかく3Dで作ったものを手描き風に見せるっていうのはおもしろくないよ、日本初の本格的3DCG作品として世の中に問うたらどうか」って言ったんです。プロデューサーってそういう役割でしょう?
――ああ、クリエイターにいろんな挑戦を促すわけですね。鈴木 ええ。新しい方法でチャレンジするっていうのは、クリエイターからしてみれば面白さよりも怖さのほうが勝るし、それを開発しながら映画を作ると、別の苦労も伴うわけです。だけど、そこを分かっている上であえて僕はけしかけたわけです。そうしたら吾朗君がしばらく考えたあとに「やります」って言ってくれました。
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※このインタビュー完全版は、「ROMAN ALBUMアーヤと魔女」に掲載されます。