• 【おそ松さん特集10】藤田陽一と松原秀が語り合う第2期最終回!
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2020.10.10

【おそ松さん特集10】藤田陽一と松原秀が語り合う第2期最終回!

(C)赤塚不二夫/おそ松さん製作委員会

『おそ松さん』第3期放送開始を記念し、月刊アニメージュのバックナンバーに掲載されたインタビューを再掲載して6つ子の世界の魅力をあらためて紹介する特集「おそ松さんを6000倍楽しもう!」
今回は2018年5月号掲載の監督・藤田陽一とシリーズ構成・松原秀の対談だ。
第2期放送終了直後に掲載された対談なので、話題の中心はやはり最終2話(第24話「桜」、第25話「地獄のおそ松さん」)のこと。
第24話「桜」は、父の入院を期に自分たちを見つめ直す兄弟、特に長男・おそ松の葛藤が静かな演出で描かれる。そして第25話「地獄のおそ松さん」は、おそ松が弟たちに “大事な話” をしようとした瞬間、イヤミの飛行機が墜落してきて全員死亡! そして6つ子のハチャメチャな地獄巡りがはじまる。
最終2話のシリアスからギャグへという流れは第1期と共通だが、第2期はさらにドラマチック。そして、そこには若いファンに向けたある種の “メッセージ” も込められていた。
なお、文中にもあるように当初この取材はキャラクターデザイン・浅野直之も含めた3人での座談会だったが、浅野が急遽欠席。その代わりに浅野が描いた「お詫びイラスト=詫びイラ」は第1期最初のティザービジュアルに自らオマージュを捧げたもので、当時、ファンのあいだで大きな話題となった。

>>>『おそ松さん』特集の全容はこちら!

クール&ドラマチックなラストスパートはいかが!?
藤田陽一【監督】×松原秀【シリーズ構成】

「桜」はつまり「さわやか3組」だった?

——本日は藤田さん、松原さん、浅野(直之)さんの3人での『おそ松さん』第2期総括座談会の予定でしたが、何と先ほど浅野さんから「ギックリ腰になって動けないから欠席します」という緊急連絡が入りました!

松原 やりやがりましたねえ、アイツ(笑)。

藤田 欠席のお詫びイラスト、略して「詫びイラ」のひとつも描いてもらわないことには収まらないですね、これは(笑)。

——ということで急遽、藤田監督と松原さん、2人でお送りする総括対談です。まず最終回の第25話「地獄のおそ松さん」、完成しての手応えはいかがですか?

松原 めっちゃいいと思います!

藤田 マジすか? オレはまだ客観的には観られないところがありますけど。できたばっかりなんで。

松原 ついさっき完パケ映像が送られてきて観たばかりですけど、スゲぇ! よくできてる!! と思いました。おもしろかったです。

——どのあたりが特に?

松原 いや、おもしろいところがたくさんあって、「どこ」とは言いにくいんですが(笑)。

藤田 弁当箱からはみ出す勢いで、大量にネタが突っ込んでありますね。

——で、最終回を語るならやはり、第24話「桜」とセットかなぁと思うのですが。

藤田 ああ、そうですね。

松原 確かに僕の中でも結構、2話でつながっているかもしれないです。

藤田 第1期のラスト2話よりつながってますね、あくまで「前回比」だけど。もっと言うと、2クール目の後半からラストに向けた前振りを少しずつ入れていました。「ニート矯正施設」(第21話)とか「深夜の日松屋」(第21、23話)とか。

——「日松屋」もそうなんですか?

松原 そういう意味もあった、みたいな感じです。単発で楽しんでもらっても全然、問題ないですけど。

藤田 「日松屋」は、こんな奴らが現実にいたら相当キツいよね、という6つ子本来の「ダメな連中」感をあらためて観てもらった感じです。その上で「桜」を観れば、また違った見え方がするかなと。

——「桜」のストーリーは、どんな風に生まれたのでしょうか?

松原 僕は、何となく「やっとかなアカンなぁ」という気持ちがあったんですよ。「ちょっと重いけど、やっといたほうがいいよね……」みたいな。ギャグものとはいえ、全部「ウソ」、全部「オチャラケ」では、何かなぁ……と。

藤田 逆に、普段「ウソ」や「オチャラケ」でやっているからこそ、やりたくなったり、効いてきたりするエピソードだとも思う。

——藤田監督は第24話で、何を見せたいと思っていました?

藤田 まあ、演出的に漠然とやりたかったのは、「青春モラトリアムもの」というか。モラトリアムの終わりは別におそ松たちだけの話じゃないぞ、お前らも悩めよ、悩んでもいいんだぞ、という若い観客に向けたマジレスですかね。答えはないけど、悩むことそのものに意味があるんちゃうの? というのが描きたかった。

——「お父さんが倒れた」と聞いた6つ子がそれぞれどんな対応をするかは、スムーズに決まりましたか?

松原 おそ松が中心の話だったので、おそ松がどうするかは、藤田さんやプロデューサーといろいろ相談しつつ調整していった感じです。残りの5人はほぼ僕のほうで考えましたけど、こいつはこうする、あいつはこうすると、わりと違和感なく決まりましたよ。

藤田 そうでしたね。カラ松くらいじゃないですか。打ち合わせで何となく「こいつ、どこで働く?」みたいな話が出たのは。

松原 おそ松に関しては、あれだけ腹の内をさらけ出したのは多分、はじめてだと思うんです。それは、僕の中では「とっておいた」イメージなんですよ。ある意味、第2期のメインというか、何となく「あいつ、最後に本音を言うのかな……」と。

藤田 おそ松については、そんな風に描こうって初期から言っていましたよね。シリーズを通してちょっとずつ積み重ねる感じで。

——おそ松がみんなを集めて「ちょっと言っときたいことがある」と言って終わりますが、あれは何を言いたいと思っていたんですか?

藤田 おそ松が悩んだ末に何を言おうとしたか……その答えは、見た人それぞれにバラバラでいいかなと思ってます。だから、画面でも表情を拾ってないし。

——確かにあの場面、おそ松の表情は一切映りませんね。

藤田 おそ松の言いたいことがポジティブなことなのか、ネガティブなことなのか、それもわからないように撮ったつもりです。なるたけフラットに演出して、解釈は見た人にお任せします、と。つまり「それぞれ考えてください」というのが、あのエピソードで言いたいことなんで。第1期の「手紙」に比べると、かなり大人な演出にはなっていると思いますよ。「手紙」はわかりやすく昭和のホームドラマ風にしたけど、「桜」はもうちょっと平成風というか今っぽく、メロウになりすぎることもなく、淡々と撮りました。特にBパートは、音楽もほとんどつけずに事実を粛々と描いていけばいいかなって……。まあとにかく、若い子たちが観ているなら「お前らの話だぞ」ってことです(笑)。

松原 そう、自分たちより若い子が観ているってことを知っているからこそ、さっきも言った「やっとかなアカンなぁ」という謎の使命感が、余計に大きかった気がします。そうじゃなければ全部オチャラケで、おもろいことばっかりで、みたいなノリでもいいかなと思うけど、若い子が観ているから全部「ウソ」はなぁ、みたいないらん使命感が……何か、言葉にすると恥ずかしいことを言ってしまいそうですねぇ(笑)。

藤田 はははは(爆笑)。いいじゃないですか、お客さんは「恥ずかしい言葉」を聞きたいと思いますよ。

松原 (笑)。実際、観る人によって印象が違うんじゃないかなとは思います。「え、別に悪いこと何も起きてないじゃない?」っていう人もいるでしょうし。逆に、ただひたすらしんどい話だと感じる人もいるでしょうし。

藤田 もっとめっちゃ若い子だったら、何の話かよくわからないかもしれないし。まあ「さわやか3組」みたいな話ですよ。

松原 ……「さわやか3組」?

藤田 いや、見た人それぞれ考えてね、という意味で(笑)。





(C)赤塚不二夫/おそ松さん製作委員会

アニメージュプラス編集部

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