• 『リラックマとカオルさん』監督が語る、ストップモーションアニメの妙味
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2019.06.07

『リラックマとカオルさん』監督が語る、ストップモーションアニメの妙味

『リラックマとカオルさん』より

Netflixで4月19日より配信中のオリジナルシリーズ『リラックマとカオルさん』。『どーもくん』や『こまねこ』などで知られる日本を代表するストップモーションアニメーションスタジオ、ドワーフが制作した本作のメガホンを執ったのは、CF映像を中心に活躍する小林雅仁監督。すでに確固たる人気のあるキャラクター、リラックマをストップ・モーションアニメーションという手法で作品にどう落とし込んでいったのか、お話を伺った。


——本作を制作する上で意識されたことは。

小林 ドラマとして成立していて、大人が見て楽しめる作品を作りたい、というお話を最初にいただいて、すごく興味がわいたので、それなら僕も関わってみたいなと。今までとはルックやドラマの考え方も違うものになっていると思います。

——実写とストップモーションアニメとで演出に違いを感じた部分はありますか。

小林 たとえば、白目のある人間のキャラクターだと会話シーンでどこを見ているかということが分かるんですが、リラックマをはじめとしたキャラクターたちの瞳は真っ黒なので、同じ考え方では演出できなかったりするんですね。なので、動きやアニメーションの仕方によって、どこを見てどこに注意を持って行くかということを考えてバランスを取っているつもりです。そこが一番大きいですね。
どこかに本当にあるような街で実際に暮らしている感じが出るといいなと思っています。

——お団子など食べ物を食べたり、生活を感じられるシーンが多くて情緒がありますね。

小林 食事のシーンはキーになる部分なので大事に撮っていますね。特にリラックマは食いしん坊で普段はおっとりしているんですが、食べ物を見るときだけ動きが早くなったりします。食べ物の造形自体も、美味しそうに見えるように作ることを意識しています。
女性の日常的な部分の描写については、女性スタッフに「こういうときは何を話してるの、どういう顔してるの」って聞きながらやっていますね。僕自身は、乙女心を持っていると自負はしているのですが(笑)。


▲食事のシーンに注目! リラックマ(&コリラックマ、キイロイトリ)たちキャラクターの表情や動きは、ストップ・モーションアニメーションの特性を活かした演出によって命が吹き込まれている。

——Netflixなので全話一斉に配信されていますが、1話ずつ見る方と一気に見る方のどちらを想定して演出されていますか。

小林 それは脚本の荻上(直子)さんとわりと議論になったところなんですが、一気見する方って結構いらっしゃるんですよね。なので、全体を通して2時間の映画のように成立しているようにしたいねと。前半に伏線を張って後半にそれが明らかになっていく、という構造も仕込んであったりします。かつ、1話ずつ見ても楽しめるということを両立させられるよう、脚本の段階でかなり詰めて考えていました。

▲これまであまり描かれることがなかったリラックマとカオルさんのやりとりはもちろん、全編を通して描かれる、アラサーの悩み多き女性カオルさんの日常描写も共感を呼ぶ。

 

——10班体制での制作ということですが、それをまとめて1つの作品に仕上げる難しさは。

小林 体制としては、始める前にチーフアニメーターが「リラックマはこんな風に動く」というシミュレーションを作ったんですね。それを基準としてトレーニング期間を設けて、10人のアニメーターたちがそれぞれ身につけてから本番に入っています。実際にやっていくと、完璧に同じ動きやスピードになるわけでもないんですが、大きなバランスは崩さないようにと考えながら、その上で、アニメーターの個性に合わせてシーンを振り分けたりもしています。10班に分けたことがプラスに作用するように考えながら進めていますね。

——実際の映像を見ると、細部までリアルなので、CGじゃないかと思われそうですね。

小林 今回はコマ撮り、ストップモーションの良さを出したくて、CGに見えるような形にはしたくないなと思っています。人形の動きも2コマオチ、つまり1秒で12回動くんですね。それはわりとストップ・モーションの良さが出やすい設定で、人形のキャラクター以外もその計算で動いたりしています。

 一瞬の流行りではなく、5年後や10年後のカオルさんも、同じように年齢を重ねた方が同じ気持ちで見てくれるといいなと。変わるべきものと変わるべきでないもの、それを語るのにコマ撮りは適したものじゃないかなと思っています。CGがよくないと思っているわけではなくて、一番大事なのはお話なので、むしろそういった手法ばかりが気にならないものを作りたいですね。実際、CGを使っている部分もあります。でもそれは、お話が面白ければ気にならないですよね。長く楽しめて10年後も古くならないものを作りたいなと思っています。


Netflixオリジナルシリーズ

『リラックマとカオルさん』

419日(金)よりNetflixにて全世界独占配信中

出演:多部未華子 ほか

脚本:荻上直子

クリエイティブアドバイザー:コンドウアキ

監督:小林雅仁

13話・各11分/4K対応

 

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文/小田 サトシ

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